うえびん

オフィサー・アンド・スパイのうえびんのレビュー・感想・評価

3.4
ヒゲと軍服

2022年 イタリア/フランス作品

19世紀末のフランスでユダヤ系軍人が冤罪で投獄された「ドレフュス事件」が、丁寧な時代考証や映像で描かれている。

【ドレフュス事件】
1894年、フランス陸軍大尉アルフレッド・ドレフュスがドイツに機密を流した疑いをかけられ、反逆罪で終身刑を宣告される。主人公のジョルジュ・ピカール中佐は、有罪の決め手の文書の筆跡が別人のものだと気づくが、体面を重視する軍部は隠匿。ピカールは左遷される。98年、事件の不当性や軍部の腐敗を作家ゾラが「私は告発する」と新聞に寄稿するなどして、99年にドレフュスは恩赦により釈放。1906年に無罪が確定した。

世界史で事件の名前を聞いた覚えはあったけど、内容については詳しく知らず、本作で初めて内実を知った。

19世紀末から第一次世界大戦勃発(1914)までのパリの街が繁栄して華やかだった時代は、ベル・エポックなんて呼ばれるけれど、本作で描かれるパリの街はどんよりと暗い。ロマン・ポランスキー監督自身がユダヤ人の迫害を経験しているからだろうか。

決闘シーンには、14世紀のフランスを舞台に描かれた『最後の決闘裁判』が思い出された。4世紀が経ってもまだ続けられていたんですね。

BGMがほとんど無く、史実に沿って淡々と進むストーリーは、予備知識が何も無かったので途中までよく解らなかった。何よりも登場人物が、皆、軍服姿で口ひげをたくわえているので誰が誰だか見わけがつかなかった。

だけれど、愛国心や軍への忠誠心、階級社会、ユダヤ人への差別感情など、当時のフランス人と国の情勢は感じられる作品でした。
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