題名は「異端の鳥」。
「いたんのしま」ではなく、「いたんのからす」でもなく「いたんのとり」である。
原題は、「The painted bird」。
話の中盤、羽根を白く塗られた鳥が群に戻った時、仲間に攻撃されて死ぬエピソードが描かれる。
原題をおさえておかないと、このシーンの重要性を見逃す。
これでもか、ここまで描くか、と言うほどの残虐シーンの連続である。
しかし台詞が極端に少なく、ムダに盛り上げようとする音楽もなく、また、色彩のないモノクロームの表現で、いつの時代か、どこの国の話か、そんな疑問はだんだんとどうでもよくなってくる。
主人公の少年の人生の過酷さが増すほどに、絵画的な圧倒的な美しさを際立たせてゆく映像に溺れることの快感。
東ヨーロッパのどこかの国が舞台である。
前半、自分の知らないヨーロッパ的な風貌の俳優達しか登場しない。
が、途中からハーヴェイ・カイテル、ジュリアン・サンズなどの見知った俳優達が登場し始める。
その時この映画はどこかの知らない国の珍しいおとぎ話ではなく、今自分の生きているこの世界と地続きであることに気付いて愕然とするのだ。