ニャーすけ

マリッジ・ストーリーのニャーすけのレビュー・感想・評価

マリッジ・ストーリー(2019年製作の映画)
4.0
まず、夫婦役であるスカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライヴァーとの壮絶な罵り合いと、親権欲しさに互いの人格攻撃に行き着いてしまった法廷シーンの醜悪さが素晴らしい。
これらの凄まじさは『レボリューショナリー・ロード』や『ブルーバレンタイン』といった他の泥沼離婚劇の名作と比べても段違いで、そういうのが好きな人にとっては垂涎もの。

しかし、そういった過激な描写がありつつも、本作を観たあとに残るのはもっと繊細で優しい余韻だった。
思えばノア・バームバックの出世作は、自身の両親の離婚について私小説的に描いた『イカとクジラ』だった。
『イカとクジラ』では長男役のジェシー・アイゼンバーグにバームバック自身の心情が投影されていたのは明白だが、両親共に作家という設定であり、それは職種こそ違えど「表現者」という形で本作にも踏襲されている。
だから、成長し映画監督として大成したバームバックが「離婚により傷つけ合う家族」を今度は両親の目線で語り直したのが本作であるような気がしてならず、だからこそ夫婦どちらか一方だけを断罪するような結末にはならなかったのだと推察できるし、そんな人間臭い温もりこそが本作最大の魅力だとも思う。

また、個人的に一番ハマったのが夫側の弁護士を演じるレイ・リオッタ。
一目見ただけで「あっ、こいつはダメだ」とわかる完全なタイプキャストで、役作りも糞もないこれぞTHEレイ・リオッタ!と言わんばかりの感じ悪い佇まいが最高。
そもそも役名からして「ジェイ・マロッタ」でほとんどレイ・リオッタだし、ふざけすぎだしイジりすぎ。
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