離婚申立理由の第一位が『性格の不一致』という曖昧な表現で括られているように、
不貞・暴力・借金・酒などの明らかな破綻原因の“無い”離婚のほうが現実には多いのだろう。
だからこそ妙に血の通っている、普通でありきたりな夫婦の諍いを見てしまうと、
二人の好演にどんどん惹き込まれてしまう。
スカーレット・ヨハンソンが『ロスト・イン・トランスレーション』で見せた、子どもっぽさを残す若妻より、
アダム・ドライバーが『パターソン』で見せた、内向きで繊細な夫よりも、
役者として完全に成熟した二人の掛け合いが素晴らしかった。
この人たちは本当に離婚危機の夫婦なんじゃないの？と。
ストーリーも、もっとドロドロした骨肉の争いとなる離婚話のほうが印象に残せるはずなのに、
敢えてどっちつかずな方向にしたことで、現実路線を選んでいる。
弁護士費用の負担、義親との関係、子どものきまぐれ、キャリアの断絶…
まったく地味なトピックなのに「あるある」と思わせてくれるのがとても上手いなあ、と何度も思わされた。
私の好きな離婚映画（というジャンルがあるのかどうか）、
イラン映画『別離』では、父母の間で戸惑う娘の視点が良く描かれていたけど、
『マリッジ・ストーリー』では子どもはオマケ程度、あくまでも2人が中心のストーリー。
キャスティングに感服！
