デッカー丼

マリッジ・ストーリーのデッカー丼のレビュー・感想・評価

マリッジ・ストーリー(2019年製作の映画)
4.5
結婚すると周りから聞かれる質問ナンバーワンはおそらく「結婚して何か変わった?」と聞かれることだと思う。
おそらくもう10回以上聞かれているが未だにこれだ!という回答は見つからない。
結婚は不思議だ。一生を共にする人を決めたはずなのに人生で一番傷つけ会う存在になったりする。好きでたまらないから結婚したはずなのに、歳をとると旦那の嫌いなところ、妻の嫌いなところで酒は進む。
お互いを知れば知るほど面白くもあり、またそのギャップに都度ぶつかり合っては修復しあう。まだよくわからないけど、おそらくそれが結婚だと思う。
恋愛はらくちんだ。いやならやめればいい。でも結婚はそういうわけにはいかない。結婚して変わるところはそこかなぁと。
マリッジストーリーは結婚して何年か経って子供もいる夫婦が離婚に直面する話だ。
冒頭は二人の仲睦まじいそれぞれの良さを紹介しあうシーンから始まる。
飢餓みたいに食べる。子供の面倒見がいい。意味もなく紅茶を入れる。瓶のふたを開けてくれる。
なんだかおかしな紹介のし合いだがそれが逆に何年も一緒にいるからこそ、という味を出している。
顔がかわいい、とか優しい、なんてのは付き合った時点で置いていかれる。日常のそんなひょんなところに
愛を見出していく美しさをちゃんと感じ取れる。
平和なのは冒頭くらいで、以降はほとんどが辛酸舐め大会だ。辛酸ドリンクバー。
弁護士を巻き込んでお互いの弱みに付け込んで、徹底的に親権を奪おうとお互いをボコボコにする為に切磋琢磨する姿は非常に醜く、悲しい。
冒頭の優しい木漏れ日のような日々をどんどん裏切っていくような作りだ。みんなそうだよね?と言わんばかりに。
ただアダムドライバーの持ち前ののんびりした風貌と振る舞いで、他の俳優がやればどんどんシリアスになっていくであろう内容が不思議と俯瞰したゆるーい人間ドラマになっている。
例えば子供の遊ぶ日を日替わりで担当していたのに子供が手を離さないから親が二人で子供を両方から引っ張り合う姿は完全にドリフか新喜劇でしか見ない滑稽さ。
またある時はふざけて手を切る真似をしたら刃が間違えて出ていて本当に切れてしまい貧血で倒れたりと。。。 俺ってなんだかなあっていうアダムドライバーが何となく身近に感じて、強くしっかり者の妻を尊敬して一緒にいたいのに素直になれない男のダサさがよく表現できていると思う。
ブルーバレンタインは本当に見ていてつらかった。
破綻していくのが目に見えてわかるから。
でもマリッジストーリーは二人の性格から、まだうまくやれるはずという一抹の希望がある。
後半ものすごい剣幕で二人が罵り合うシーンがあるが、あれは演技としては今年一じゃないかなあ。ジョーカーとバットマンが尋問部屋で荒々しくやり合うけど、あんなもんじゃない。多分身近な話題だからなんだろうなと思う。もっとドロドロである。言葉もグサグサと刺さる。
渦中にいるときはほんとに今すぐ終わらせたいって思うけどすこし離れると後悔する、お互いを理解してどちらかが我慢するようなことはしないで、今を一緒にいられる、人生はそんな人と巡り合うべきだと思う。
マリッジストーリーを見てとても考えさせられた。繰り返される家族の連鎖で今があって、その家族一つ一つに何かしらの課題があって。その一つを垣間見て、肩の荷が降りるというか、身の引き締まる思いというか。この映画のように明確な何かを感じ取るわけではないのだけど、ぼんやりと感じる気持ち。大人向けです。

スカヨハの妹がイギリス訛りで演技するところはクソ笑えます。
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