ちゃりお

ホモ・サピエンスの涙のちゃりおのレビュー・感想・評価

ホモ・サピエンスの涙(2019年製作の映画)
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ロイ・アンダーソン作品、特に『さよなら、人類』と比べて他者と観客の眼差しが意識されていて、ドラマティックな面が強調されていた。殺人、命乞い、他者に縋る嗚咽、浮気の糾弾……。どれもこれまでのロイ・アンダーソンでは考えにくい人間臭さだった。

これまでのロイ・アンダーソン作品は実存を撮りながらも、そこに映る人間はどこまでも概念の擬人化のように冷たかった。たとえ嗚咽していようとも、そこには概念が形を崩さずに毅然と存在していた。人間の形を通して超越的な概念を表現していた。

だが『ホモサピエンスの涙』に出てくる人間は、狭い足場でバランスを崩すように容易に概念の枠を飛び出す。涙を他者に見せるために泣いているのであり、憐れな姿を他者に受容してもらうために泣いている。他者を意識する、と言う要素が概念を人間たらしめている。