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バーナデット ママは行方不明のmitoのレビュー・感想・評価

4.0
2023年108本目。
お久しぶりなリチャード・リンクレイター監督作品。

かつて名を馳せた女性建築家バーナデットは今は一線を引き、マイクロソフトに務める夫と優等生の娘を支えていた。
大の人嫌いでご近所付き合いも出来ない彼女だが、優秀な成績で卒業を迎える娘から「南極へ行きたい」とせがまれる。

船旅という嫌でも人と密室で長旅を強いられる南極旅行に拒否反応を示すと思いきや、一念発起して旅行を承諾する。

その南極行きに関しては1つのエッセンスであり、本質はバーナデットの半生を通じたクリエイターというものの性と、身近な人に理解されないという事の苦痛。

前者は創造する人種が、創作活動を奪われるという事が如何に苦痛なのか。
才能や自身の資質を活かせる事の喜びは何者にも代えがたいものであることを、当然のことながら創作する側である監督の思いも込められているんだろう、バーナデットの葛藤を通じて描かれる。

個人的には後者のすれ違い描写が響いた。
夫の「俺は妻の事理解してるし、気に掛けてるんだ」という自負が、全く彼女に対してプラスに作用しない様や、自分の価値観で「何故それが出来ない」と糾弾する様は、そこまでのバーナデットの人となりを観察していた観客としては胸にズッシリと来た。
なまじ、夫は夫で本気でバーナデットを気に掛けて行う行為なので、余計ダメージがデカい。

ただ、終盤はこれがリチャード・リンクレイター作品で良かった、と思える突き抜けた展開となり、最後は一発逆転レベルで救われる。
この救いに観ている側も救われる。
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