Eike

勝利への旅立ちのEikeのレビュー・感想・評価

勝利への旅立ち(1986年製作の映画)
4.2
大好きな作品。
1986年の作品ですがAFI:アメリカ映画協会が2008年に発表したスポーツジャンルのオールタイムBest10では第4位に選ばれた「名作」であります。

主演はG・ハックマン。共演がバーバラ・ハーシーとデニス・ホッパーとくればアメリカ映画のファンでないとピンとこないかもしれませんが、かなりアメリカンニューシネマの匂いを感じさせるベテランたちです。
だから至って地味な作品でも味わいがあるというか決して「軽く」ない。

物語はインディアナ州の片田舎の高校のバスケットチームが新任のコーチに率いられて州大会の優勝決定戦にまで進出するというドリームストーリー。
これはインディアナ州で1954年に起こった史実を下敷きにしたもの。
とはいえ、ストーリーそのものは、まぁよくある話なわけです。
しかし細部や人物描写が丁寧に織り込まれいて、分かっていても次第に応援せずにはいられなくなるんですね。これぞ映画のマジックでしょう。

特筆すべきはまずカメラワーク。初秋から冬にかけてのノスタルジックでどこか懐かしい田園地帯の美しい風景を見事にとらえています。
しかし試合のシーン(特にクライマックス)では一転、スピーディーで縦横に動き回る映像が見る者の興奮を呼び覚ましてくれます。
そして極めつけは名手ジェリー・ゴールドスミスの音楽!オーケストラサウンドに電子楽器の音を盛りこんでいて古臭くないんですねぇ。
特に試合シーンのテーマは日本のシンクロスイミングチームが演技で使ったこともあるほどダイナミックで本当にすばらしいの一言に尽きます。

監督は当時TVでポリスドラマの金字塔、「ヒル・ストリートブルース」をクリエイトしていたデビッド・アンスポー。
脚本のアンジェロ・ピッツオとは7年後にRudyで再タッグを組んでおり、こちらも地味ながらファンが多い作品です。
今ではスポーツ映画として名作扱いされている本作ですが製作は一筋縄では行かなかったらしくG・ハックマン氏はあまり乗り気ではなかったそうです。実は元々はジャック・ニコルソンが主演する予定だったらしく、本人も乗り気だったそうなのですがスケジュールの都合で止む無く断念。
デニス・ホッパーが演じたシューター役も第一候補はハリー・ディーン・スタントンだったそうでスタントン氏はこの役を受けなかったことをかなり後悔していたそうです。
予算が足りず、音楽のジェリー・ゴールドスミスはオーケストラをアメリカではなくハンガリーで手配してコストを抑えたというのも映画製作の大変さを伺わせる話ですね。

そんなクラシック作でありますが、本作はスポーツ映画であり大人のロマンス映画であり、敗者復活の物語でもあります。
見ていて気持ちのいい作品ってのは中々出会えないものですが、この映画のような作品との出会いがあるからやはり映画はやめられないのだ。
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