シュウ

“樹木希林”を生きるのシュウのレビュー・感想・評価

“樹木希林”を生きる(2019年製作の映画)
4.3
想定していた仕立てと全く違い、なかなか興味深い作品に仕上がっていた。

前半の樹木希林さんの何気ない日常、
そこから出てくる深い言葉の数々に触れるのも良い時間だが、
後半、作品の作り手として、ひいては人間としてのあり方を突きつけられてからの展開は非常に見応えがある。

樹木希林という存在、
そして彼女の余命が限られている中でその時間をもらっているという事実に、
覚悟のない凡人が突きつけられるとどうなるか。
そのやりとりが非常に生々しかった。

希林さんの立場に立つと、
この仕事を受けた理由としては、
自分の最後をステキな作品として残しておきたいという希望が
あったのではないだろうか。

それを裏切ったうだつの上がらないディレクターが、
あまり見られない彼女の狂気を引き出せたという意味で、
非常に価値の高い作品だと思う。

自分という存在が関わるからには一流の作品に仕上げたい。
そんな希林さんのクリエイターとしてのプロ魂が見られた。

ただ希林さんは一つの作品に向かって同じ方向を見て人と歩く意味では超一流であるが、
実は人と人で正面を向いて話すのは、上記と同じレベルで得意でないのかも、と思った。
そういう意味で、そこをせざるを得ない状況に置いたのが、この作品の価値

最後の最後で、今までにない新たな引き出しを開けざるを状況を作り出す。
希林さんも、ディレクターもおそらく望んでいなかったことだと思うが、それに成功しているように思う。

希林さん、最後まで本当にお疲れ様でした。

映画「バードマン」を思い出した。
シュウ

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