つき

地獄の黙示録 ファイナル・カットのつきのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

小学生の頃、何故か戦争映画を好んだ父親の影響で一緒に観た記憶がある。戦争怖いなぁーと途中で離脱。最近になってわたしの好みを知っている同僚のおじさんが絶対好きなやつだと思うから是非!とお勧めしてくれた。多分30年ぶり位かも。

IMAXの大画面と音でベトナム戦争を擬似体験する。暑さや湿度、色も生々しく衝撃的。撮影技術もシーンの美しさも。これが何十年も前の映画とは思えない。めちゃくちゃ斬新だし当時観た人は腰抜かしただろうな。
主役は最初、ハーヴェイ・カイテルだったとか?マーティン・シーンすごかった。戦争体験から考えることを放棄しているようにも見える。ベトナム戦争の帰還兵の多くがPTSDに苦しんだというまさにそれ。ふと見せる葛藤や恐れみたいな表情が上手い。今の映画界にこの人がいたら盲目的にファンになる笑

同じ国の軍人を抹殺するという極秘ミッションを受けて川を遡上する。キルゴアが追いかけてくるのがアホみたいで笑う。キルゴアのチャプターは実は笑うところではなくて、兵士たちも何のために戦っているのか大義を失ってしまっているという暗喩なのだろう。
フランス人のコミュニティ、あのチャプターがよくわからなかったけど、何のために戦ってるのか自問自答してしまうような、観客の頭の中をさらに混沌とさせる仕掛けなのかも。いろいろな事象のアンバランスさに気が狂いそうになる。お勧めしてくれたおじさん曰く「アリ・アスター作品の狂いっぷりに近いものがある」わたしもそんなふうに感じた。何日も何日もその映画のことを考えて眠れなくなるような。

音楽もいい。大音量のワーグナー。ローレンス・フィッシュバーンがストーンズの『サティスファクション』で踊ったり、ドアーズの『The END』あの年代のロックが好きな人には堪らないと思う。ずっと戦争映画だと思い込んでいた。戦争をモチーフにしてはいるけど哲学的な要素が強いと感じた。個人的には5億点付けたいくらいの作品に出会った。
つき

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