ねぎおSTOPWAR

めまい 窓越しの想いのねぎおSTOPWARのレビュー・感想・評価

めまい 窓越しの想い(2019年製作の映画)
4.0
普通に「めまい」って打って出てくるのは「현기증」でした。
でもタイトルには「바티고」って。えっと、これはアルファベット的に言うとba-ti-go・・
あーこれ「VERTIGO」ってことね!
ヒッチコックの名作「めまい」と同じ原題ってことです。
「あえてのヒッチコックへのオマージュというか何かしらがあるのかな・・??」
そもそもヒッチコックの「めまい」って彼の他作に比べると端的に言って意味深。人間の内面と混乱の中にいざない、エンドもスッキリはしない映画。



基本的に主人公ソヨン(チョン・ウヒ)や交際中のジンス(ユ・テオ)、窓ふきのグァヌ(チョン・ジェグァン)・・彼らの背景や思いはセリフではあまり語られないんですよね。
だからソヨンの母や、同僚たちのちょっとした言葉などから読み解くしかない。

観終わってすぐは、そこに薄暗い溝があって明らかになり切っていない感じ。
良いも悪いも理解、咀嚼が出来ていない感じでした。


撮影については、冒頭からあえてのボカしショットが目につきました。フォーカスが合う範囲を狭くして、手前にいる人物から奥の人物にフォーカスを移動させる画が何度か出てきます。それをあえてゆっくり行う。まるで”めまい”を抱える人がぼやーっとした意識で外界を捉えているような画。単純に窓からの景色を撮る場合もゆっくりと景色にフォーカスを合わせたりね。
不穏と言うか、非リアルドラマを表現した画のようにも思えます。


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以下はネタバレですので、これから鑑賞する場合は読まないでください。
かなりな妄想です。まったくズレていたらごめんなさい。
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よーく考えて観ると、ヒッチコック「めまい」も不思議な話で、主人公スコティ(ジェームズ・ステュアート)は犯人追跡中に同僚を死なせてしまったことから高所恐怖症になるという設定ですが、裏設定として彼はマザコンで、《高所恐怖症》《落下》あたりは出産の恐怖・不安のメタファーという話。
実は今作「めまい(韓国)」においても、主人公の性別は変わるけれど、ソヨンは父親の暴力により鼓膜が損傷し聴覚異常➡めまい➡高所不安?であり、ある種ファザコンでもある。
根源的に父性を求めてしまう・・結果、実父からは《DV家庭内暴力》交際中ジンスは《バツイチ》で《バイセクシャルという二股》上司次長からは《パワハラ》《セクハラ》・・ついでに言えば実母は《他者依存・娘依存》と、安定を求めるものの現実として安定には程遠い。
言ってみれば生活の恐怖・不安。
それがメタファーではなく、人間界のネガティブコミュニケーションをはっきりと一手に引き受けたような状態。男を求めれば求める程に不安が増幅していく日々。

このあたりは同タイトルを持ってきただけの相似なのかなあって想像したりしています。

グァヌの存在は元祖「めまい」にはなかったポジションかと。
最後「主人公の彼女が落下して死を選ぶ」というひとつのエンディングを、彼は彼の背景・ストーリーから大きく変えるわけです。
夢のために金儲けの手段としてエロサイトに乗り出すも、おそらくは自死を選んでしまった姉・・彼はまるで姉を救うかの如くソヨンを助ける。

・・そこでの濃厚なキスは、王子様と女の子のキスなどではなく、実はとっても気持ち悪いというか、ファザコンのソヨンの全てを全力で受け止める人生が待っているわけで・・。
だって急にストーカーのように窓の外からじーっと自分を見ていた男にキスしますか??笑

ここからはさらに妄想が膨らみますが、グァヌは姉の誕生日にケーキを買ってきました。微笑ましい姉弟にも思えますが、死後ずっと姉の映像を夜な夜な観ているなんて、ひょっとして近親相姦?姉弟恋愛だったのでは・・。グァヌはグァヌで姉の影をソヨンに見ていた?
これは考えすぎかな。笑

まあまあ、だからこれは恐ろしい話なんじゃないかと。
一見すると「82年キムジヨン」のように社会問題(雇用の問題などなど)を入れ込んだ映画のようでいて、「オーメン」のような・・言い過ぎか!


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