Sari

郵便配達は二度ベルを鳴らすのSariのレビュー・感想・評価

3.9
巨匠ルキノ・ヴィスコンティ長編監督デビュー作のサスペンス映画。
1934年のジェームズ・M・ケインの小説「郵便配達は二度ベルを鳴らす」の映画化作品。

1930年、ロサンジェルスのハイウェイ沿いにあるガソリンスタンドの安食堂。ここにひとりの流れ者がやって来る。食堂の女房の体に魅せられた男は、そこで働くことにした。やがて二人は情事を重ねるが食堂の主人はまったく気づかない。そして二人はついに、恐ろしい計画を実行に移すのだが…。


これまで4度映画化されている。
最初に映画化されたピェール・シュナール監督『最初の曲がり角』(1939)。
本作は2度目の映画化となるリメイク版であり、タイトル『郵便配達は二度ベルを鳴らす』が物語の暗喩的な意味を成している。

アメリカでは郵便配達は通常、玄関のベルを二度鳴らすしきたりがあり、来客ではないという便法である。郵便配達は長年の知識で、どこの何番地の誰が住んでいるか把握しており、居留守を使うわけにはいかない。 つまり、二度目のベルは‘’決定的な報‘’を意味する。 結末まで見るとこの邦題に納得出来る。

オールロケで切り取られた風景の中、不倫関係に堕ちた男女のむせかえるような愛欲の行方が描かれる。
全体的に処女作とは思えない仕上がり。ショットの決まり具合、濃厚なラブシーンが下世話にならない演出等ヴィスコンティの美意識の高さと格の違いを感じさせる。

上映禁止処分を受ける程に社会の現実を生々しくスクリーンに焼きつけ、ネオレアリズモの代表作であるロッセリーニの『無防備都市』の先駆けとも位置付けられている。

2023/03/31 Amazon Prime Video
〈デジタル修復版〉
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