CHEBUNBUN

The ArbitrationのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

The Arbitration(2016年製作の映画)
3.5
【パワハラ/セクハラの目線】
Netflixにて配信のナイジェリア映画(ノリウッド)。『ナマステ・ワハラ』で挿入された裁判シーンを抽出したような作品『アービトレーション: 交差する視点』を観た。本作もまた、性的虐待を受けた女性が裁判を持ちかける内容となっている。これがまた興味深い作品であった。

IT企業CEOのGbenga(OC Ukeje)は元従業員に訴えられた。原告のエンジニアDara(Adesua Etomi)は性的虐待を受けて退職に追い込まれたとして、株を要求する。しかし、CEOは仲裁委員会を設置し、穏便に事態を収めようとする。不利な仲裁会議に、女性弁護士と共に立ち向かう。本作が面白いところは、ナイジェリア映画を観る限り、女性の社会進出が進んでいることだ。女性のエンジニアが主役であり、性的虐待の裁判で、単に賠償金を請求するのではなく、株で要求するあたりにビジネスの中核に女性が積極的に関わっていることが伺える。しかも、原告・被告双方の弁護士は女性である。これは日本の法廷ものでは全く観られないであろう。

そして、いわゆるパワハラ/セクハラの実態に迫る法廷ものであるが、そこでの議題が経営層の目線で描かれるところも面白い。証人として、元従業員のエンジニアが召喚される。彼は、ビジネス案をGbengaに提案するが、冷徹に却下されて会社を去る。しかしその後、起業しプラットフォーム連携を持ちかけるため再びGbengaのもとを訪れる。しかし、彼は嫌がらせのように「株の70%をよこせ。でなければ提携は結ばない。」と圧をかけてくるのだ。株を用いてベンチャー企業をいじめる様子から、彼のパワハラ/セクハラする性格を炙り出す。

ノリウッドは富裕層向けの映画が沢山作られると耳にしていたが、それは単に豪華絢爛な映画を作ることではなく、会話レベルが経営層に合わせられていることを意味している。本作も、裁判ではなく仲裁会議というマニアックなシチュエーションで描かれていることからも、ナイジェリアの映画監督自体が企業の経営層に近いマインドを共有していることが伺える。

いつも通り、画は作り込まれておらず観辛いのですが、ナイジェリア企業のフリーアドレスに近く、ほとんどパソコンだけで仕事する風景も観られるのでナイジェリアビジネスに興味ある方にオススメしたい作品だ。
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