レインウォッチャー

わんわん物語のレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

わんわん物語(2019年製作の映画)
3.0
この映画に登場する犬たちは本物+口元CGなのだそう。とはいえあのフルCG版ライオンキングを作り上げたディズニーなので、もはやCGなのかリアルなのかの境目はどうでもいいレベルであることに気づき、なんとも未来になっているなあとしみじみ。
ご多聞にもれず有名な「スパゲッティキス」のシーンが観たくて試聴した今作、やっぱりそこはかなり気合を入れて作られている。あまりに擬人化しすぎたシーンなのでリアルわんこでやるとどうなるか?というのも幸い杞憂で、雰囲気を損なわず絶妙にかわいらしいシーンになっている。こういうところでやりすぎると、突然「つくりもの」感が浮き彫りになって冷めたりグロテスクに見えたりするものなので、その線引きのうまさは感心させられるところ。レストランの店員が歌う「Bella Notte」も甘く夜空を溶かし、観ているこちらもどこか特別な夜になったような、素敵な心持ちにさせられる。

一方で、全体を通してリメイクの意味があったのかというとそこまで…という感じではある。風来坊であったトランプが最終的には裕福な家の飼い犬としておさまる、という展開も変わらず、価値観のアップデートのようなものは見られない。むしろ原作にあった、さまざまな動物=人種のるつぼたるアメリカの写し絵、という比喩性・風刺性のようなものはリアル化することにより薄らいで(意図的に陰険なシャム猫=アジア人風刺のくだりをなかったことにしてたりもする)もっと単純な「わんこかわいい」に目くらまされた印象だ。あと毎度おなじみ「とりあえず黒人出しとけ」感も、良い改変とは言えないと思っている。人種やらジェンダーやらに気を配ること自体はもちろん重要だけれど、そこにあえて設定改変してまで触れるのであれば何かしら意味、もっというとポリシーを示してほしい。とりあえずルックのバランスを整えるだけ、とかとりあえず黒歴史を塗りつぶしておく、というのはアップデートではなくてただのおためごかしだろう。

最後にこれはどうでもいいことではあれ、「ネズミには人格がないんかい」というのを重箱の隅として突っ込んでおきたい。それだけ欧米では害虫に等しい扱いということなのかなあとは思えど、あの世界で最も高名なおネズミ様を祀るディズニーなのに?というのが気になったのでした。ハツカネズミかドブネズミか、的な?むしろこれが一番の、語られもしない差別じゃないか。なんてね。冗談冗談。。。えー、わたくしは、ディズニーを、心より応援しております!