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ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷の都部のレビュー・感想・評価

2.0
粗筋以上の工夫が見られない90分に渡る作劇は大いなる退屈を招き、トリッキーでもスラッシャーでもゴアでもない至極半端な人体損壊描写が齎すのはその場の凌ぎの蹂躙であり、それは決して作品の完成度に帰依することはありません。暫定的に殺人鬼と呼ばれるピエロ達が制作したお化け屋敷という設定が作品には据えられていますが、その殺人鬼の特性を活かした仕掛けはさして見られず、軽薄な7人の大学生達が生き残りの最小数になるまで月並みな殺戮が繰り返されるばかりで中身は無いに等しいと言えるでしょう。

主人公の抱えるトラウマとの対峙も雑な形で消化され、自分が過去に晒されていたDV家庭という環境を『お化け屋敷』と唱えて、現状と重ねる流れはまるで納得出来ませんし、それに対する反抗のアプローチは含みも何もない暴力という方法でしかなく脚本の浅慮さを拭うことはやはり出来ていないように思います。

また殺人者である彼らが取り付けるピエロの仮面もあくまで表面上の魅力に過ぎず、ホイホイと仮面を取って自分の顔面を嬉々として晒す姿は恐怖とは程遠い立ち振る舞いで、この点も含めキャラクターメイクの薄っぺらさが顕著に出ています。

仮面を剥がす=本性を晒す姿を目にする事を目的としているようですが、そうした殺人鬼間の認識もブレブレで、モチーフである仮面と大学生達の表も裏も同じ様な設定の前にそれが機能しているとも言い難いのが目に余るものがありました。

本作は体験を終えた後に心と記憶に何も残さない子供騙しのお化け屋敷のような映画であり、設定の抱え落ちがその哀愁をより加速させるものしています。
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