イリノイ州のカーボンデールを舞台にハロウィンの夜に殺人鬼が若者への殺しのためにつくった生存率0%の"究極のお化け屋敷"に大学生6人組を招き入れる恐怖の実態を描いた暴力ホラー映画‼︎冒頭で主人公宅に何者かがパンプキンを玄関のとびらへ投げ込み"ぐちゃぐちゃ"になる光景が映し出されるが、鑑賞後に思えばそれ自体が若者へ向けた警告(案内状)のようでもある。まず本作は製作に鬼才"イーライ・ロス"が名を連ねていて、鋭利な刃物や破壊性抜群の鈍器などゴア描写の容赦無さ感は作品の持ち味として全編に通底していた。また原題の「Haunt」は直訳で"付きまとう"や"出没する"など。いわゆる殺人鬼の理解不能な行動原理や主人公自身の暗いトラウマを示唆している。作風的に真っ先に思い付いたのが今年みた『ミッドサマー(2020年)』。いわば若者サイドの"最初から運命には抗えない"ような含みがハード感満載で全編に張られていたのは印象的である。端的に若者サイドがいつお化け屋敷の真の実態に気付くのか…その辺の緊迫感の描き込みがうまい。どこまでが演出でもしくはそうじゃないのか…。まさに"お化け屋敷"という閉鎖的で恐ろしく廃工場のような空間での人間の心理を逆手に利用した震え上がる意図に思う。本作は一見観客を楽しませる旧来の既視性溢れるアトラクション映画の体裁ではあるが、"過去を悔やみ古傷を背負った人間の底しれぬ衝動と変化"が成長劇をベースに力強く映し出されている。あと序盤、主人公グループより前の来場者グループがお化け屋敷の入口付近ですでに待機してるのをなんとなしに画面の隅でカットインさせる憎らしい演出は後から思い返せばホラー感が増して良かった。
→総評(その道は安全か危険か…殺人お化け屋敷の脅威)
総じて前半の実態が明るみに出るまでの舞台の作り込み感は"お化け屋敷自体の舞台装置(あるいは必然性)"がシチュエーションならではの空間や小道具を最大限に利用させ恐怖を浴びせてくれるためかなり娯楽目線では楽しめた。また"道順に従う"や"演者には触れない"、"携帯電話をボックスに預ける"など入口で課された4つのルールでも、来場者を巧妙に操るミスリードとして注意事項が設けられていたのは設定が丁寧に思いました。が、逆に云えば後半でバタバタ死者が出だして以降の停滞感かつチート感は否めない。はたまた生還を目指す同じ仲間の存在もそれぞれがあまり他の仲間を気にかけたりキャラ特有の役割が薄いためキャラの没個性はかなり致命的だったんじゃないか。。たとえば中盤、ダクトに一人ずつ入るくだりでも最初に出口に到達したキャラに対して誰もそいつの安否を心配しないとか。仲間同士のそういう振り切ったシーンは目に余るほどかなりあった。。一番興醒めしてしまったのが、殺害シーン直前でいきなりシーンが変わりまた画面がそのパートに戻れば人物が瀕死状態で死にかけている、などホラー映画のお約束が守られずだいぶ肩透かしである。とかく来場者を執拗に襲う覆面集団サイドのバックボーンでも、あまりに行動原理が簡略化され過ぎで若者を憎む意図も"顔面への嫉妬"以外で思い当たらないのはチープで非常に残念である。主人公が後半で極端に最強となるフェミニズム性も何か過去以外での動機でエモーショナルが欲しかった。てか全体的に奥行きの薄さが作品全体に響いていてやはり仇となったように思う。結末の生還者も序盤のキャラ配置でおおかた予想してたのが当たりました。エンドロール直前の意味深な一捻りも奇をテラっていてなんで?感はあるが笑えました。というよう本物のお化け屋敷かどうかって人間の心理を逆手に利用したホラーを劇場で夏場の暑さを吹き飛ばすこの時期に体感してみて下さいな。