DJあおやま

街の上でのDJあおやまのレビュー・感想・評価

街の上で(2019年製作の映画)
4.2
今泉力哉監督の新作、それも下北沢を舞台にした恋愛群像劇といういかにもな作品とあって、公開を心待ちにしていた。
大きな事件は起きず、男女の他愛のない会話が続く、時には贅沢なまでの長回しで。これで130分も観せる監督の技量に舌を巻く。今泉監督の作品ではよくあるタイプの映画だが、これまで以上に退屈や冗長に感じるシーンがなく、よりアップデートされている。まさしく、今泉力哉監督の代表作と呼ぶにふさわしい出来栄え。
下北沢の古着屋で働き、ふらっとライブハウスで音楽を嗜み、行きつけのバーに行って酒を飲む。珉亭でラーメンをすするシーンも含めて、まるで下北沢のプロモーションビデオのような作品。幻想的な美しさはないが、まるで夢を見ているかの寓話。若葉竜也の絶妙なルックスと、けしてがんばらない人物像も良く、そこに彩りを添える美女4人のバランスが良い(なかでも中田青渚が優勝)。クライマックス、それぞれのドラマが交差するシーンには、群像劇の妙を感じて思わずにやり。友情出演の成田凌の使い方も良い。そして、相変わらずラストカットがニクいほど良い。“完結”ではなく、あくまでもこれからも続く主人公の物語の“ひと区切り”としての終幕。同じ今泉監督の『mellow』のラストよろしく、観客の想像を膨らませるだけの余白を持たせるラストがたまらなく好きだ。そして、エンディングテーマのラッキーオールドサンの流れまで素晴らしい。
ところで、主人公がしきりに口にする、「浮気された上にフラれた」と言う言葉に違和感。浮気された=フラれただと思うのだが、違うのだろうか。
DJあおやま

DJあおやま