MasaichiYaguchi

シチリアを征服したクマ王国の物語のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.7
イタリアの作家ディーノ・ブッツァーティが1945年に発表した名作児童文学をを映像化したフランス・イタリア合作によるアニメーション映画は、幻想的な色彩とユーモラスなキャラクターたちによって、ファンタジックなエピソードが次々と展開する。
遥か昔、シチリアの山奥でクマの王レオンスと息子トニオは平和に暮らしていたが、或る日、トニオが猟師に連れ去られたことでレオンスは息子を探しに、仲間と共に雪山を下りて人間の街へ向かう。
大挙してクマがシチリアの街に向かったことを知った残忍な大公は、それを迎え撃つべく軍隊を率いて一戦を交えるのだが…
本作には、この大公たち以外にも様々な相手との戦いが描かれるが、ユーモア溢れるクマたちによるものなので壮絶さはなく、何処かほのぼのとしたテイストがある。
本作のキーパーソンの1人として魔法使いが登場するが、良きにつけ悪しきにつけ、クマたち、特にレオンスとトニオの運命を左右する。
そして物語を彩り、クマの父子をアシストする重要なキャラクターとして、原作には登場しない少女アルメリーナがいる。
この聡明で勇敢な少女は、破滅へと突き進む者たちの過ちや弱さを指摘し、何とか正しい方向へ導こうと奮闘する。
本作は人間をクマに準え、暴君を倒した解放者として迎えられた英雄の目はいつしか曇り、王国を混乱に陥れてしまうという教訓や、異なる文化との共存、共生の難しさと大切さをファンタジックな物語で浮き彫りにする。