何度やり直しても回避できない世界の終わりを描いたギャレス・エドワーズの監督としての初仕事。BBC製作。一応、映像作家としてのキャリアを歩み始めた「処女作」という扱いでいいのかな?
とりあえず、人類最後の日を描いたSFモキュメンタリーの様相。監督はもともとVFX畑の人であるから、その作り込みにはかなりこだわり抜いているような気がする。
いろんな媒体で情報が伝えられるのをみせていくのがうまい。なつかしいブラウン管からのニュース映像、タクシーのなかではラジオが不穏な事件を告げ、電光掲示板が避難を呼び掛けると、空港では災害警報がアナウンスされ欠航便が相継ぐ。津波、隕石、ウイルス、ブラックホール、報道が防災を呼び掛けるもの一色になっていく過程。これで非常事態を伝えてくれる。
『モンスターズ』や『ゴジラ』ではフェイクニュースの巧みさで怪物の被害を表現していたけれど、本作でもすでにソーシャルメディアを画面に入れ込む手管が確認できる。我々にとって身近な報道を描くことによって、世界の状況を描けるはずだと、確固たる信頼を持って津波や隕石接近のニュースを真実味を帯びたものに作り込んでいる。
キャラクターやガジェットよりも「状況」を伝えることに腐心する姿勢は、のちの大仕事にもしっかりといかされているようだし、まずは世界を深堀りすることで人間の生活を垣間見ることが出来るわけだ。
これが、怪獣王ゴジラという強固な個性を引き立てたいときや、スターウォーズの出来上がった世界を描く上では好相性だったようで、非現実世界の市井の人々の生活を描いていくドラマ『キャシアン・アンドー』の方向性にも引き継がれている。
昨今のSF映画のつくり方に少なからず影響を与えた映像作家だと思うから、ギャレス・エドワーズというフィルムメーカーを今からでも追ってみるといいかも。若いしそんなに多作ではないから、まだまだ追いつけますぞ。