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グリーン・ナイトのzhenli13のレビュー・感想・評価

グリーン・ナイト(2021年製作の映画)
4.0
物語として作り上げられること・語られることの疑念が主人公のガウェイン卿によって表されていて、彼が「まだ語るべき物語が無い」"Not yet”と述べるが、信念や力を持っていること=語られるべき者なのか、語られるため・語り継ぐための修飾として信念や力がある者だったと「作り上げられる」のか、ということがずっと示され、彼自身は「作り上げられた」あともNot yet、未然であり続けた。

『ア・ゴースト・ストーリー』でもみられた時間飛躍で一気にうおーっと持っていかれた。『ガウェイン卿と緑の騎士』のあらすじをざっくりとしか知らないのだが、ラストのくだりで上手いこと現代の物語として脚色したなぁと感心してしまった。
語るべき物語をまだ持たないどころか永遠に未然の存在であるかもしれないのに、英雄譚には成り難い存在なのに、語られてゆく存在になってしまったことを、個として始末をつけるための幻想。

それによって、ガウェイン卿がはじめはルネサンス以降のいわゆる写実的な手法で肖像を描かれ、次にはカメラ・オブスキュラの原理で壁面に姿を焼き付けられ肖像になるというシーンが時代を考えてもありえない(アーサー王伝説が5,6世紀、ガウェイン卿の物語が書かれたのが13世紀、そのいずれであっても)ので疑問だったが、これはアリなのだと一気に了解してしまった。
てか勝手な解釈なのだが。

時間飛躍の中で、女性たちがどのように踏みにじられ、逆に利用し、また包摂していったかも端的に示されるが、これは非白人キャスト起用と同じく、時代のコンプライアンスに応える以上のものには至ってなかったかも。
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