みゆ

オン・ザ・ロックのみゆのネタバレレビュー・内容・結末

オン・ザ・ロック(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ニューヨークで愛する夫と二人の娘に恵まれ、幸せな毎日を送っているローラ。ところが、夫のディーンが新しい女性の同僚と残業や出張を繰り返すようになり、不倫を疑うようになる。不安に駆られたローラは、男女の問題に精通する1人のプレイボーイに相談を持ち掛ける。それが、父親のフェリクッス ビル・マーレイだった。
フェリックスはこの事態を調査すべきだとローラにアドバイスし父娘2人でディーンを尾行することになる。アップタウンのパーティーやダウンタウンのホットスポットを駆け巡る2人。そして、フェリックスとローラは、自分たち父娘の関係についてある発見をする。
実際に、娘で、母親でもあるソフィア・コッポラ監督。この作品は、自身が日々の暮らしで感じた仕事と家庭の両立などの葛藤、そして実父であるフランシス・フォード・コッポラ監督とのエピソードを盛り込んでおり、とてもパーソナルな映画です。
おそらくこれまでは疎遠だった娘と父は、夫の尾行で行動を共にするうちに親密になっていきます。そして、父娘の関係の真実が露わになっていく。舞台はニューヨークだし、2人はアメリカ人だけれど、うん、うんと頷きながら観ました。家庭と仕事の両立、親との関係、万国共通の問題が非常にに共感しやすい形で描かれている。
決してパーフェクトではない父と娘だけれど、この2人がとても可愛い。笑ったり、しんみりしたり、心をふわりとさせてくれるエピソードがいっぱいで、また監督の愛もたっぷり感じられて、観ていて心地良かったです。
父親フェリックスのビル・マーレイ、この人は本当に素敵。紳士然とした立ち居振る舞いで女性にモテモテの男を飄々と演じます。独特の女性感・人間観を持っていて、それを実の娘にとうとうと言って聞かせる様子が、まあなんとも可笑しい。娘ローラを演じたのはラシダ・ジョーンズ、ビル・マーレイとのコンビネーションが抜群に良かった。父親に振り回される娘を好演。見ていてとても好感が持てました。
そしてこの映画の舞台となるニューヨークの街も実際に魅力的。ソフィア・コッポラ監督は「この映画は私からニューヨークへのラブレターにしたかった」と語っていたそうですが、そこで生まれ育った人ならではの描き方。一大観光都市ではない、素顔のニューヨーク。
クスクス笑って、ちょっと切ない気持ちになって、でも最後には、家族が愛おしい気持ちになる、とても素敵な映画でした。
みゆ

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