TaiRa

2人のローマ教皇のTaiRaのレビュー・感想・評価

2人のローマ教皇(2019年製作の映画)
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ちゃんとフェルナンド・メイレレスの映画だった。カメラが忙しない。

前教皇のベネディクト16世(ヨーゼフ・ラッツィンガー)と現教皇のフランシスコ(ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ)が議論する映画。ベネディクト16世の生前退位前に舞台は設定されてるけど事実とは異なるみたい。保守派と改革派の2人が信仰や教会の在り方を語り合う中で、普遍的な罪と赦しの物語になって行く。堅苦しい話になりそうな所をポップに落とし込んでいて見易い。考え方が真逆なおじいちゃん2人が散歩しながら意見し合う、その光景自体は平和的で楽しい。意見は違えど相手を批判しない。議論を中断して楽しく過ごす時間はとても良い。アンソニー・ホプキンスの可愛さ、ジョナサン・プライスの人の良さが滲んでいる。「私のCDを持っていますか?」「もちろんですよ」「サイン書いてあげますよ」「……あ、はい。ありがとうございます」ここ良い。楽しい時間と共に彼らが過去に背負った罪がだんだん明かされる構成。ホルヘの過去編は映像のトーンもだいぶ変えてる。ヨーゼフの過去は描かれないが、少年期にヒットラーユーゲントに加入していた事(加入は義務付けられていた)で常に「ナチ野郎」と批判される描写、カトリック神父による児童虐待事件への対応など、間接的に言及される。罪に赦しが与えられるって何なのか、簡単に赦されていいのか、など信仰と関係なく考えるべき事だけど、この映画は一つの結論として、友人が見捨てず寄添う事こそが救いでは、と言ってる。
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