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Careful(原題)
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『Careful(原題)』に投稿された感想・評価

[雪崩に封じられた感情と刷り込まれたの階級差] 60点

大きな音や感情の爆発で大規模な雪崩が起こるとされる麓の街トールズバッド。住民は静かに感情を昂ぶらせないように暮らしていた。サイレント映画の過激なサンプリングで有名なガイ・マディンの長編三作目である本作品は、主に戦前ドイツの山映画(『死の銀嶺』や『モンブランの嵐』など)を模倣している。そもそもドイツにおける山映画は、アメリカにおける西部劇のような文化や歴史が融合したジャンルだったのだが、マディンはそれを"高い場所といえばゴミで埋め立てた公園くらい"と言われるウィニペグをモチーフにカナダで再現したのだ。そして、初のカラー作品でもあり、サイレント期の着色フィルムのようなベタ塗りのときもあれば、アメリカの不味そうなアイスのようにシアン、マゼンダ、ライムグリーン等々ゴリゴリの原色になっていたりするのは絵画的でありながらゴシック要素を残すグロさが横溢している。

主人公のグレゴリウスとヨハンの兄弟は魅力的な母ジナイーダの下で暮らし、クララという同じ娘が好きだったが、ヨハンの抜け駆けによって二人は結婚することになった。しかし、ヨハンはすぐにジナイーダとのオイディプス・コンプレックスに悩まさ始める。誰もヨハンの変化に気が付かない中、既に亡くなった兄弟の父が亡霊として現れ、屋根裏に幽閉された唖者の長兄フランツに来たるべき未来の警告を与え、ジナイーダは夫だった自分よりもノッカー男爵を愛していたと告白する(亡霊が消えるときのぐわーんという演出は適当すぎて吹き出した)。ちょっと『ハムレット』みたいな展開。そして、ヨハンは母親に媚薬を飲ませて近付くが、それを苦にして自殺する。

感情を抑圧したトールズバッドで一番の権力者はノッカー男爵という老人だ。本来マーティン・スコセッシが演じる予定だったが、『ケープ・フィアー』を完成させるために降板せざるをえなかった。そして、男たちはノッカー男爵の屋敷で働くため、こぞって執事養成学校に通い、礼儀と常識と"階級差を弁えること"を刷り込まれていく。階級差を感じさせないのは外界との接触のない二人、つまり主人公兄弟の幽閉された長兄フランツとクララの妹で箱入り娘のシグリンダだけだ。

第二部になるとヨハンとジナイーダとの関係はクララとその父親の関係に乗り移る。しかし、当の父親はクララの妹シグリンダが大好きでクララには目もくれない。そこで、グレゴリウスの恋心を利用して回りくどい復讐を遂行する。まず、ジナイーダは結婚に反対していたノッカー男爵の母親が亡くなったのを期に結婚しようとしていた。そして、ジナイーダがフランツを幽閉していたのは死んだ夫を思い出させるからだった。グレゴリウスは父の敵としてノッカー男爵に決闘を申し込み、クララに唆されて彼を殺すのだった。

漸くクララと一緒になれると心を躍らせるグレゴリウス。しかし、クララの心はその父親に向いていた。銃声で雪崩を起こして彼を殺す計画で、クララは洞穴に逃げ込むことなく父親と心中し、残されたグレゴリウスは涙を流す。すると、ここで設定初めてを思い出したのか激しい感情変化によって再び雪崩が引き起こされ、グレゴリウスは洞穴の中で凍死する。こうして登場人物はほぼ全員死に絶え、残されたのは階級差を意識することのなかった唖者のフランツと箱入り娘のシグリンダだけだった。

マディン初期作にありがちな、画面にしても人物関係にしても無駄に情報量の多いきらいがあって、一つの作品するには確実に必要のないサブプロットで溢れている。それなのに、"激しい感情変化で大規模な雪崩が起こる"という最も重要ともいえる設定を最後の最後まで忘れていたり、そもそも山を舞台にするという設定が不気味に浮いていたりして、まだ十分に成長しきれていないのが分かる。つまらなくはないんだが、どうも『ギムリ・ホスピタル』のストレートな纏まり具合や後年の作品を観てしまうと乗り切れない部分があるのが正直なところ。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUNの感想・評価

3.0
【マーティン・スコセッシ出演予定の山映画】
先日、購入したガイ・マディンDVD-BOX収録の『CAREFUL』を観ました。本作はWiki情報によると、当初マーティン・スコセッシが出演予定だったのだが『ケープ・フィアー』製作の為に降板したとのこと(一応、"Kino Delirium: The Films of Guy Maddin(2000)"がソース)。ガイ・マディンが往年の山映画やケネス・アンガー作品に愛を捧げた作品であり、白黒映画のイメージが強い彼としては珍しいカラー着色が施された作品である。

1800年代の架空の山岳村Tolzbadでは、僅かな感情の揺らぎやくしゃみで雪崩が起こるとされ、人々は慎ましく感情を押し殺して生きていた。その信仰ゆえに、村では、「水に濡れてはいけない」「胡桃の木の近くに座ってはいけない」といった厳しいルールが敷かれている。そんな村に住む執事学校に通うJohannとGrigorssは母親に恋をしてしまう。厳しい戒律に押し殺していたインモラルな感情との鬩ぎ合いを『THE FORBIDDEN ROOM』に通じるサイケデリックな色彩で描く。クリーチャー造形で心理を具現化するクローネンバーグと似たような特徴を持っています。

そして、クローネンバーグと肩を並べられる変態性をガイ・マディンは発揮する。Johannは母親の夢を観るが、不道徳さを戒める為に燃ゆる炭を唇にあて自傷行為に走る。Grigorssは蝋を死体に塗りたくる。これらは、自分の不道徳が村を滅ぼすかもしれないという感情が引き起こしており、抑圧された感情が歪んだ行為を引き起こす心理現象に説得力を持たせている。

ガイ・マディン最大の強みである時代遅れの映画技術を、太鼓昔にはありえない不道徳描写で異次元未来の映画に昇華させる技法がギラついた作品であるが、この時点ではまだまだ技術をコントロールできていない感覚があり、俳優の素人っぽい演技も重なりパワーは今一つでありながらもクローネンバーグに近いぶっ飛んだアイデアと理論的構築に脱帽しました。