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i-新聞記者ドキュメント-の667djpのレビュー・感想・評価

3.7
まず第一に二時間全く飽きずに見れるこのドライブ感は編集の鈴尾氏の力が確実に大きい。彼の仕事を称賛した上で、以下感想。

まず森さんは前作の佐村河内以上に本作の望月衣塑子に興味がないんだと思う。良くも悪くも。
望月さんを追っているカメラの多くが明らかに森さんではない人間によるものが多く、被写体に対するアングル(切り口)の意図が弱い。
望月さん個人が直面している問題(望月さんに対する質問の規制)と森さんが興味を持っている官邸記者クラブという奇怪なシステムの問題が二重に走っており、どこかでこの二つが作品内でより合う瞬間を待ったが、最後までそれは訪れなかった。このメインとなる二つの問題提起以外にも様々なエクスキューズが具体として(辺野古、伊藤詩織、宮古島の弾薬庫)飛び交うがそれらが収束していかない。
バラバラであることが悪いことではない。この様々な事象が乱立することで作品が多義性を帯びていることも事実だ。
ただ一本の「i」と名付けられた作品として括り切れているか、と問われれば、首を傾げてしまう。
ラストシーンのパリ解放に関する森さんのナレーションではこの映画を閉じることは出来ない。

それらを鑑みてこの作品は成功してると言い難い。
ラストにインサートされるアニメーションの露骨な対立の提示や、秋葉原でのメディアの姿勢とそれに対する反安倍勢の罵声の場面の意図の不明瞭さが悪目立ちしていた。

今作を見て改めて森達也という稀有な目を持ったドキュメンタリー監督自身のカメラが、いかに作品の出来を左右するのかがよくわかった。
彼が何をどのように見たか?
そこから紡がれるものは?
それこそが森映画の一番の魅力なのだ。

あ、ちなみに劇映画の方の「新聞記者」の五百万倍面白かったよ。
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