CHEBUNBUN

WAVES/ウェイブスのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)
3.5
【青春の蹉跌は蒼き薫り】
A24お抱えの鬼才トレイ・エドワード・シュルツに結局誰も真似してくれなかった(ウィル・スミスは真似してくれたけど)『ムーンライト』の蒼光りする黒人演出を継承させ、中産階級に生きるパリピ高校生の差鉄とその波動に苦しむ妹を描かせた。

映画館で観ず、パソコンで観た私をビンタしたくなる程に観るアーユルヴェーダな蒼き色彩とスピリチュアルなサウンドによる開放感があっという間に自分を包み込む。視覚・聴覚を殴りつけて来る演出に涙しながら釘付けとなるのだ。

しかし、よくよくストーリーを追うとなんて陳腐でありふれた話なんだろうと驚かされる。親に期待され、日夜レスリングに挑む。期待の重圧が負荷となり、ある事件で差鉄を味わうのだ。

重圧から解放されるかと思いきや、その解放の先がパーティーに向かい、その自己破壊的行動が大惨事を生む。そして、悲劇のバトンは妹へと渡るのだ。

日本のお涙頂戴ドラマでも見かけそうなありきたりな話。しかしながら、トレイ・エドワード・シュルツはそんなありきたりを至高の芸術へと昇華させたのです。

人気料理バトル漫画『美味しんぼ』には、米を一粒一粒選別し形・大きさを揃えて炊く手法で海原雄山が山岡士郎をフルボッコにしたあの《ご飯》に近い作品と言えよう。

日本公開は4月です。
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