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WAVES/ウェイブスのmitoのレビュー・感想・評価

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)
3.8
2020年70本目。
ある家族に起こった悲劇から再生までを音楽と共に描くA24作品。

今、映画界で一番勢いのある製作スタジオA24の新作はプレイリストから産まれたある黒人家族の物語。

レスリングで奨学金を得て、親にも一心に期待を寄せられているタイラー。
そんな彼が、肩の故障を切っ掛けに、周囲の期待を裏切る恐怖に押し潰され、破滅していく…これが前半戦。
後半戦はタイラーの妹であるエミリーに視点が移り、タイラーの悲劇から立ち直る家族とエミリーを描く。

前半と後半が対比的な構成なっており、
前半で家族が抱えた後悔や関係性の亀裂を、
後半で同じ過ちを犯さないよう各々が選択したり、前半の事件に対して何かしらの決断をしたり…。
前半の出来事がショッキングなだけに、完璧に元通りにはならないが、彼等なりに前を向いて歩み出す様は、描写も丁寧だけに心に響く。

A24お得意の映像演出も印象的。
車内の中心を軸に後部座席→運転席→助手席と360°回転するカメラ視点が多用されている。
あと、ムーンライトばりの色彩的効果。ポスターの海のシーンもそうだが、青や蛍光色の鮮やかさが美しい。

で、そんな特徴的な映像演出の中で、恐らく一番印象に残るのはアスペクト比を使った演出。
閉塞的であったり、絶望的状況ではアスペクト比が狭く、ポジティブな状況になるにつれてアスペクト比が広くなり、画面内の登場人物の心的要素と合わせ鏡のようになっている。
配給作の「A GHOST STORY」もそうだけど、A24ってアスペクト比弄るの結構好きだよね。

直近でアスペクト比を使った演出で印象に残ったのは、A24じゃないけどグザヴィエ・ドランのmummyかな。
あれも、終始アスペクト比が狭まい中、登場人物の絶望が希望に変わった瞬間にアスペクト比が広がり世界が広がるという、この作品に似た演出だったけど。

音楽に関しては歌詞はリンクしているけど、思ったよりは映画の邪魔をしていない。
個人的にはもっと邪魔しても良いくらい音楽が主張しても良いのに、と思った。

前述の通り、総じて洒落た演出が多く、
それが鼻に付いて苦手って人もいそう。

個人的には…大好物。
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