春とヒコーキ土岡哲朗

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONEの春とヒコーキ土岡哲朗のレビュー・感想・評価

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バランスが悪いのさえ面白くなってきた。

長いけど、面白い。世界の危機のために異常なまでに体を張るという、どでかい映画。そのポジションを全うして、今回も派手だった。アクション以外でも、サイモン・ペッグ演じるベンジーがAIの出題するクイズに正解しないと核爆弾が爆発するという状況が一番ひやひやした。

そんな面白いシーンいっぱいだったけど、ベニスでの敵ガブリエル追跡のくだりが、長かった。ベンジーとルーサーがパソコンをいじってイーサンに指示する絵もその前の空港のシーンと同じだし。そんな退屈な流れも、AIがベンジーの声をまねてイーサンを騙すホラー展開でまた面白くなった。あと、落ちていく列車内を移動して生き残るアクションも、落ちる台数多いなと思った。さらに言えば、ストーリーもシリーズの歴史を持ち出す感じが前作から見受けられて、そんなのはなくてもいい気はする。だけど、もはやそんな風にバランスを崩しながらしか見せられないアクションとストーリーの合わさった映画なんだと思うとそれもよくなってきた。

年をとっても「女のため」なのが分かりやすい。今回明かされたイーサンの過去では、何らかの事件に巻き込まれて恋人が殺され、それでイーサンはIMFに入ったようだ。さらに、つかず離れずの関係であるイルサと、今作で初登場のグレース。イルサを守るために奔走するがかなわず、グレースは絶対に死なせまいと戦う。超人なんだけど、いくつになっても結局女のために頑張るのが、単純でいい。グレースなんて、別に「愛した女」というわけでもなく、ただ最近会った女。それでも命がけで頑張るのが、雑に言えばただモテたいだけで愛らしい。この人は世界の危機と戦うモチベーションとしてモテたいがある人。敵であるポム・クレメンティエフにとどめをささなかったのもそう。真ん中にヒロインを置いているストーリーの構造からして、ヒロインのためなら頑張れるだろという考えで作り手が作っているのも、単純で良い。その単純なことをお金のかかった画で見せるのがハリウッドのアクション映画だなとも思った。