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コリーニ事件のxyuchanxのレビュー・感想・評価

コリーニ事件(2019年製作の映画)
3.9
ひさびさの重厚な法廷劇。
義務とは、法とは、公正とは、正義とは、差別とは、戦争とは、時効とは、贖罪とは・・・。

2001年のドイツ。新人の国選弁護士ライネンが担当することになったのは、トルコ系かつ両親が不在だった彼の親代わりの恩人だった大企業の社長ハンス・マイヤーの殺害事件。

”僕は弁護士だ、医者と同じで殺人者でも助ける”

被害者の近親者に近い人間が、加害者の弁護人に選定されるのか?という点が腑に落ちないのだけど、だからこそ余計に公正という概念が重くのしかかる。さらには、(原作ではどうやら生粋ドイツ人エリートという設定だったみたいだが)非エリートの新人という立ち位置が、のちに立ちはだかる敵にとって好都合だったから・・・という伏線も効いている。

“父親には会っておけ。いつまでもは居ないんだから。”

中盤での容疑者の発言から、彼が過去に父親を殺されたのではないかという事と、ルパン三世が愛用していたワルサーP38が出てくるという事からナチスがらみかという点は予測がついたのだが・・・そこには予想以上の悪魔がいた。

"正義が欲しいだけだ”
”死者は報復を望まない”
名優フランコ・ネロの演技の重みよ。

主演のエリアス・ムバレクもなかなか。すでに3本みてた。

そして60年もの苦悩からの解放を思わせるラストシーン。


第二次世界大戦中、数十万もの民間人が軍事的な報復で殺されたものの、1968年に制定されたドレーアー法により多くの戦犯が罪を免れた。

原作者はドイツ屈指の弁護士だというのは納得だが、この小説の影響で刊行の翌年、ドイツ連邦法務省が「過去再検討委員会」を設置したという驚きの事実が。さらには彼の祖父はナチ党全国青少年最高指導者だった人物なのだそう。余計にズドンと重みが増す。

いっぽう日本は東京裁判以外の戦犯は不問にされたに近く、良し悪しは簡単に語れないが、いろんな事が曖昧に処理されてきたのは確か・・・なんともモヤモヤする読後感でした。
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