ほのか

コリーニ事件のほのかのレビュー・感想・評価

コリーニ事件(2019年製作の映画)
4.0
ノーマークだったけど、とてもとてもよかった。


ふと顔を上げると、そこにいる自分以外のみんなが自分の敵であるかのように感じる。
事件そのものよりも、それぞれが口を噤む理由が胸を刺す。









※ちょっとネタバレ
言わない、言えない、言ったところでなんにもならない。言ったらまた自分と同じ気持ちを抱える人を産む。
彼と彼の問題は、国と国の過去の立場が背後に透ける。
今ドイツで暮らす、戦争を知らない人たちが感じてしまうことになる責任は、その責任を負うことを戦争中だけでなく戦後にも後回しにしたせいでもある、どこで誰かがその尻拭いをしなければならないのではないか。それを感じさせるべきではないという覚悟。それを感じさせたところでどうにもならないという諦め。ただ言わないだけではなかったそれらがとてつもなく重かった。
ライネンの生い立ちや立場のひとつひとつが積み重なっていくうちに、彼がコリー二の弁護士として弁護する立場の信憑性が高まってくのが絶妙。常にどちらかに振り切りそうになりながらもきちんとバランスをとってた。綿密に練られた展開に正しい角度でメスが入ると、作り物への違和感をほぼ感じないだけでなく面白味を多分に感じられるんやなぁ。