ジョージアの伝統舞踊を初めて観た。力強く、大地を踏み鳴らし、身体を大きく見せ、衣裳を翻す。キレッキレの動き、上下、回転。とにかく激しい。打楽器のリズムが、ずいぶん離れているが、ポリネシアのリズムに似ている。そう、まるで戦いの前に鼓舞する踊りのよう。ジョージアの歴史を踊りで表しているという。ペアの女性は添えられ、男性の勇敢さが全面に出る。
そんな力強い伝統舞踊の国立舞踊団のダンサーの同性愛がテーマ。伝統舞踊は興味深かったし、赤毛の巻き毛のメラブが恋する気持ちを抑えられなくてどんどん表情が柔らかくなり、ルンルンってなっていくのが愛らしかった。ラストの踊りは爽快で一皮向けたメラブの心の舞いだった。
ただ性描写が生々しくて、ジョージアの国の貧しさがなんだか悲しくて、粗削りすぎて私にはあまり響かなかった。
国立舞踊団といっても一つではなく、いくつもある。とりわけ貧しい舞踊団のようで、激しい回転と動きで床がぼこぼこに剥き出しになっていて危険に感じた。指導者や団員たちがクズだった。
家庭、職場、ダンス、最低な環境が重なると、リアリティーを感じなくなり、フィクションでも入りこめなくなる。
実際にはジョージアダンスは子供の習い事にも人気だそうで、元トップダンサーだったお父さんが簡単にやさぐれるのも極端に感じた。
信仰の厚い保守的なジョージアで同性愛を主題にしたことに意義があるのだろう。
主役のメラブの父も兄もユダヤ系の名前だったが一家はクリスチャンだった。そのあたりはストーリーとなにか関係あるのかな。
同性愛への国別の寛容度を調べたら(同性愛に刑罰のある国は除かれているみたい)、ジョージアは下から５番目だった。不寛容の国はイラクやイラン等のムスリムの国よりコーカサス地方に多い。
