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キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱のPoMooNのレビュー・感想・評価

3.4
邦題はキューリ夫人であり、相変わらず長ったらしい副題がつけられているが、これは原題通り、『放射性物質』の誕生物語であり、それを産んだキューリ夫人の、、

キューリ夫人の伝記物ではあるが、
研究による発見が波紋の様に形を変え、あらゆる分野広がっていき、それが人類の進歩と進歩悪になる事を見せつける作品でもある。キューリ夫妻の発見の使い方がレントゲン技術や癌治療など善の面・その延長にある未来、広島の原爆やチェルノブイリ原発事故、ネバダ州の核実験などの面とを19世紀の時代の対比で見せくるのも、考えさせられる。

小学生の時、小学生用の伝記本で読んだが、ノーベル賞を二度授与された偉人伝で書かれているのは仕方ない。だが、この作品の中の彼女自身と夫婦愛は美化されがちなところを生々しく描いている。

移民としての差別・男性社会の更に科学者の世界での女性蔑視に抗いながら形成された性格なのか?元々なのか?頑固、傲慢、負けん気が強く、所謂扱い辛い偏屈な感じ。よく言えば芯が通っていてぶれない。夫ピエールの援助が無ければ一人でノーベル賞を取れたかは疑問なのに、愛する夫にも同じ研究者ゆえの嫉妬。夫死後の不倫のスキャンダルetc… いゃ〜、イメージが変わった。

作品中で一番彼女に反感を持ったのは研究者は発見したら、その後の使用のされ方に関心のない事だ。責任を負うことは出来ないが、
使われ方の行方にも影響にも関心が無い。当時、放射能が人体に被害を与える事を知らなかった事も驚きだ。気づき始めても彼女はそれすら認めようとしない。

19世紀の時代で、しかも女性で二度のノーベル賞受賞となると並の人物では無いが、美化せず人間的な面を赤裸々に描いた作品だった。
No.1298
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