安堵霊タラコフスキー

ファイアー・ウィル・カムの安堵霊タラコフスキーのネタバレレビュー・内容・結末

ファイアー・ウィル・カム(2019年製作の映画)
2.2

このレビューはネタバレを含みます

やりたいことと作品の意図はよくわかるのにまるで面白くないというある意味凄い映画。

冒頭の環境破壊描写や車とか斜面におけるキアロスタミ的な撮り方とかは悪くなかったけれど、基本的な描写が味気ないものばかりでクローズアップも比較的多かったせいで全然美しいという感情が湧かず、むしろロベール・ブレッソン以上に重くて淡々とした映像に終始眠気を覚えてしまった。

かつて放火した疑いのある男が村に帰って母親と暮らしていたらまた放山火事が起こって恨まれるって話も、人間関係への皮肉が感じられるものではあったけれども予告を見て想像した以上のものでは決してなかったし描き方も簡素過ぎたからか見ていてさして感慨も抱けず、終わり方もまだ続きそうってところで急に終わったから尻切れトンボ感が甚だしかったので虚しさすら覚える終幕だった。

肝心な山火事の描写に関しても送られなかった手紙や天国の日々における火災シーンとかと比べても報道映像的で美しさや荘厳さが感じられないものとなっていて(実際の消火活動に同行して撮ったからそんなことになったんだろうけど)、クライマックスの火災場面でも全く感動できなかったのにはさすがに驚いた。

キアロスタミとヌリ・ビルゲ・ジェイランを足して4くらいで割ったようなこの作品、キアロスタミもジェイランも好きな自分ながら意外と相性が悪く、予告を見たときよりも本編で満足感が得られなかったが故に金を無駄に損した気分にさせられて軽くショックを覚えた。