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栄光の夢のSのレビュー・感想・評価

栄光の夢(2013年製作の映画)
4.0
スロベニアのボスニア系?セルビア系?移民(=チェフール)の青年の日常を描いた作品。
冒頭に出てきたČefurji raus! 「チェフールは出ていけ」的な意味?はスロベニアによくある移民や人種差別的な落書きだそう。


旧ユーゴスラビアの解体や、内戦など、あのエリアの民族間の争いの歴史を知っていれば、もっと味わえる作品なのだろうと思う。でも、予備知識がなくても考えさせられる映画だった。

この作品を通してそれを「知りたい」と思えたことが大切なのかなと。しかもこの映画の公開は2013年。このご時世、移民の状況はもっと過酷になっているだろうし…。周りの人に見てみたら?と言ってみたい作品。


チェフールと呼ばれる移民たちの結びつきは強く、親や親戚づきあいは密で濃いが、主人公のマルコたちは煩わしさを感じている。
自分の名前を口にするのも憚られるほど、移民としてのアイデンティティは揺らぎ、
閉塞感のあるコミュニティから抜け出せず、“虐げられた移民”としてしか未来を描けない苛立ちや焦燥感、抑えられない衝動に飲み込まれるマルコたち。
彼らはやることがなくてただただ広場に集まり、下らない悪さをしては親をヤキモキさせる。

だけど親は自分の諦めた夢、手に出来なかったものを与えてあげたい一心。なのに親の生き様や考え方をどうしても尊敬できない、情けないとすら思ってるのは、移民として生まれ、ずっと虐げられてきたからこその考え方なんだろうなと思う。


警察に補導されたマルコを迎えに来た父との車内でのやりとりがジーンときた。父は祖父の仕事の都合で、サッカーチームへの入団を諦めスロベニアに移住し、だからこそマルコにはバスケで夢を、人生を掴んでほしかった。

ラストのバスケのシーンは、色んな意味があると思うけど、失ってからこそ分かる親の想いや与えてくれた環境、そして自分が本当に求めていたことを知ったのかなと…。

主人公のマルコを演じる俳優さんの真っ直ぐだけどひねくれていて、強くて、でも全てに絶望しているような繊細な眼差しが印象的だった。
諦めているようで諦めてなくて、何かに怒っている眼差し?


レストランでの人種差別や、車で街を爆走して自国の歌をかけまくったり、同じ移民同士でもデリケートなバックボーンの違いがありそうな所、センシティブな状況で揺れながら生きてる感じが伝わってきた。

音楽からも民族的な何かを感じられてよかった。
特に、バスの運転手を襲うところや、父との車内でのシーン!
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