MasaichiYaguchi

光を追いかけてのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

光を追いかけて(2021年製作の映画)
3.7
本作では、過疎化の進む秋田の美しい田園を背景に、思春期の少年少女と将来を憂う大人たちの灰色な日常が、その町に忽然と現れた「緑の光」とミステリーサークルによって、少しずつ希望へと変化していくのを中学校閉校祭準備の進行と共に描かれていく。
両親の離婚を切っ掛けに、父の故郷である秋田県に引っ越してきた中学3年生の彰は、転校先に馴染めず憂鬱な日々を過ごしている。
そんな或る日、彰はいじめられっ子の翔太と共に空に浮かぶ謎の緑の光を目撃する。
水田に出来たミステリーサークルに辿り着いた彼らは、不登校のクラスメイト・真希と出会い、彼らは秘密を共有することになる。
一方、彰たちが通う中学は過疎化による閉校の日が迫っていて、最後の学校行事として「閉校祭」の準備が進められていた。
だが、ミステリーサークルを巡る騒動は、彰と真希の家族や友人、学校、街を巻き込んで、夫々が抱える問題や葛藤を浮かび上がらせていく。
学校の閉校、離農、離職、そして貧困の原因となっているのは、多くの若者が地元を離れて都心部へ流出してしまうことにより、地方の過疎化が深刻化していることにある。
そのことにより、第一次産業の衰退や限界集落の増加といった問題へと発展していく。
勿論、これは舞台となっている秋田だけの話ではない。
この問題に対して、本作では離婚で地元にUターンして市役所に勤める彰の父・良太が奮闘している。
本作のポスターやフライヤーに「光を望むな。」「光となれ。」というキャッチコピーが出ている。
何事も手をこまねいていたら、どんどん事態は悪化してしまう。
自らで希望の光を追いかけ、そして自らも輝かせることの大切さを、成田洋一監督、キャストの柳葉敏郎さん、生駒里奈さんという秋田出身のスタッフ&キャストの地元愛に彩られながら、そのメッセージが温かく伝わってきます。