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カミーユのakrutmのレビュー・感想・評価

カミーユ(2019年製作の映画)
4.0
中央アフリカ内戦の現状を世界に伝え続けたフランスの若き報道写真家カミーユ・ルパージュを描いた、ボリス・ロジキン監督の伝記映画。武装勢力セレカによって制圧され、市民への暴力が続いている中央アフリカの首都バンギを取材していたカミーユは、そこの学生たちと知り合いになり、彼らが参加したキリスト教系の民兵組織反バラカに同行して、内戦の様子を取材することになる。

現在ではセレカと反バラカの停戦が合意され、選挙で選ばれた大統領が統治しているが、それでも不安定な中央アフリカでの撮影はかなり大変だったと思われるが、とてもフィクションとは思えないリアルな映像はドキュメンタリーを見ているようである。カミーユの心情をほとんど描かずに出来事を淡々と表現する手法も、そういう感覚に拍車をかける。でも、その実直さが見ている側の胸を打つ良質な作品である。カミーユを演じたニナ・ミュリスの演技も素晴らしく、カミーユ役としてしっくりくる。

内容的にも、内戦状態にある国の惨状がきちんと描かれているのは好感が持てるし、当事者ではない他国のジャーナリストに突きつけられる現実には考えさせられる。報復攻撃として人間を集団で虐殺する様子を、そのすぐ近くで淡々とカメラに収めるカミーユの心の中はどうだったのであろうか。一度フランスに帰国した後に、他の国への取材を打診されたにも関わらず、再度中央アフリカを訪れるカミーユは、反バラカの民兵に同行して取材をするが、民兵組織のグループリーダとなった知己の学生に対して理想論をぶつが、内戦を目の当たりにして、どのように感じたのであろうか。本映画を通じて、あらためて、様々な国や地域で続いている紛争・内戦の悲惨さや、根本的な解決の難しさを実感させられる。
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