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クレアのカメラのakrutmのレビュー・感想・評価

クレアのカメラ(2017年製作の映画)
3.8
カンヌ国際映画祭を舞台に、そこに参加している映画監督や映画会社のスタッフの人間関係を、どこか不思議な雰囲気を持つフランス人女性クレアの媒介として描いた、ホン・サンス監督の中編ドラマ映画。

2016年のカンヌ国際映画祭の数日間を利用して、ちょうどそこに参加していたイザベル・ユペール(『エル ELLE』)とキム・ミニ(『お嬢さん』)を共演させて撮影されたとのこと。この二人の共演であればもっとじっくりと撮りたいと普通は思うだろうし、ホン・サンス監督ならば実際に可能でもあるだろうに、ザクッと大雑把に仕上げてしまうという良い意味でのいい加減さが潔い。真面目な日本人にはあまりできない芸当かもしれない。

私の好きなミニマルなストーリー上の長い会話劇というわけではないが、シャッターを向けた相手は別人になってしまうと言いながらポラロイドカメラで写真を撮りまくるちょっと超自然的な存在にも見えるイザベル・ユペールをキム・ミニ以降のホン・サンス作品にぶち込んで化学反応を起こしたという感じは悪くない。写真で別人にはならないが、クレアによって人間関係が良い方向に変わっていくというストーリーをきちんと備えているので、短い期間での撮影ながら完成度も高い。相変わらず、キム・ミニが演じるどこか達観した強いキャラも健在である。

映画監督の韓国人男性がカフェでクレアをナンパしたときに、英語での会話が続かず微妙に気まずい雰囲気が流れるシーンのリアル感に納得。ホン・サンス、うまい。
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