イルーナ

羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来のイルーナのネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます

巷で話題の中国のアニメ。観た方誰もが絶賛するので、ずっと気になっていたのですが……
いや冗談抜きで、「……何だあの作画は!?」ってなりました。
バトルシーンのキャラの動きがやばすぎる。マジでギュンギュンあり得ない速さで動き回ってる……
アニメファンの方々がこぞって絶賛してたのがよく分かりました。
シャオヘイの猫モードも、大きなおめめのデフォルメの効いたルックスながらも、その仕草はまさにリアルの猫そのもの!
キャラのグッズが欲しいと思ったのは本当に久しぶりだ……あと、パンフレットが売り切れていたのが悔やまれる。

同時期に公開された『ウルフウォーカー』とテーマが似ているため比較されやすい本作。
タイトルに『戦記』とあるから「あの絵柄でハードな展開?」と思っていたのですが、意外や意外、コミカル要素がかなり多い。
まさかこんなにも天丼ギャグが観られるとは思わなかった。しかも漫画のギャグシーンと同じ感じでデフォルメされる。
中国のアニメ作品は初めて観たのですが、こんな表現を見られるなんて嬉しかった。

シャオヘイはまだ幼いから、簡単に周囲の影響を受けてしまう。
だからムゲンは自分なりの選択ができるように、色々な経験を積ませていたんですね。
わざわざ遠回りしていたのもそのためで。
フーシーは「故郷を人間の開発によって奪われた」キャラにしては珍しく、最初の頃は人間を受け入れていたが、度重なる人間の裏切りにより許せなくなってしまった。
序盤のあれも、おそらくマッチポンプだと思われますが、同じ境遇であるシャオヘイを即座に利用することはなく、優しく接していた。
しかし、最初からいた側が、悪いこともしていないのになぜ隠れて生きて行かなければいけないのか?というのもまた正論であり……
復讐者というポジションでありながら、非情になり切れない。自分の行動が行き過ぎていることもよく理解している。しかしもう引き返すことはできない……
そんな複雑かつ切ない存在であるフーシー。善悪は単純に割り切れるものではないということをよく伝える存在です。
敗北を認めた後森へと姿を変えますが、周りから「材木にされるだけだぞ」「公園になるかもしれんぞ、有料のな」と、現実的なことを言われてしまう。
結局、過去に固執することしかできなかったのが余計に悲しい……

そして「共生」というテーマ。
こちらは「もう妖精が堂々と生きられる時代ではなくなってしまったのかもしれない」というある種の諦観が漂っていて、館長も「築き上げたものを壊すのは簡単なことだ」と、事件により人間との関係が悪化した可能性すらほのめかす。
「人間は自然の方に歩み寄れる!」と断言した『ウルフウォーカー』と違い、むしろペシミスティックでさえある。
(もっとも、『ウルフウォーカー』は史実ベースなので、その後の歴史を知るとウッ……となるのですが)
しかし、シャオヘイが本当の居場所を見つけた結末にじんわり。それまでムゲンとの積み重ねがあったからこその結末です。

とにかく、中国映画界の底知れないポテンシャルを見せつけられた作品でした。

追記:これWEBアニメの前日譚だったんですね。10年近く前に作られた1話目からすでにアクションギュンギュンでびっくりだ……しかもハ〇ルまで出てくるし。
あと、フーシーにちゃんと救いがあるらしいので気になります。
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