りょう

羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来のりょうのレビュー・感想・評価

4.0
 2年ぶりに2回目を観ました。「しょせん中国のアニメ」と思って、最初の期待値がかなり低かったので、物語も映像も想定外の完成度にびっくりしました。韓国映画の「シュリ」をリアルタイムで観たときと似たような感覚です。コメディタッチの描写も日本の感覚とずれてないし、吹替版で観たので、何も予備知識がなければ日本の作品と勘違いしたかもしれません。
 少しデフォルメされたシャオヘイのビジュアルがかわいいし、ニヒルなムゲンがカッコいいです。個々のキャラクターがしっかり設定されていて、妙に現代っ子な執行人のNADAとかも終盤だけの登場ではもったいない存在です。意外と親子とか兄弟とか、家族の関係がまったく描かれていないことが気がかりでした。妖精には存在しない概念なのでしょうか。
 人間と妖精の共存という、ありがちなテーマですが、妖精の能力やコミュニティの設定などが個性的です。人間の都市開発で故郷を奪われた妖精たちのシチュエーションは、北米大陸や南半球を中心とした欧米の植民地支配、ロシアによるウクライナ侵攻、まさに紛争が激化してしまったパレスチナなど、現地の住民が難民化していることを含めて、現実世界の侵略を連想させます。
 そう解釈すれば、政治的なメッセージもないとは言えないので、これが中国の作品であることにあらためて驚いてしまいます。続編が制作されているようですが、無事に完成・公開されることを祈ります。
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