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アトランティスのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

アトランティス(2019年製作の映画)
4.0
【追記】2022.3.1
この映画のようなことが現実になりませんように、早く戦争が終わりますように。ロシアが侵攻をやめますように祈っています。

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ディストピア。10年に渡るロシアとの戦いの末、廃墟になった国と人びと。環境は汚染され、資源は枯渇し、産業は衰退し、世界に取り残され、新たな海外資本の支配下になり、希望を失い、心を病み、傷ついた人びとは国から去っていく。
長いこと死が常に隣り合わせで、正常な普通の感覚に戻ることが出来ない。
ただ忘れられた死者を探して葬ることしか出来ない。
置き去りにされた遺体を発掘し、識別し、埋葬するボランティアたち。
長回しで全編は重く暗く寒く、肌をふれ合う温もりだけが生きている証。

クリミア戦争のことだろうか。それとも架空の戦いか。これから起こるかもしれない不安か。クリミアに逃げる話があったから違うかもしれない。
クリミア戦争の帰還兵が大勢自殺している記事を目にしたことあります。

この作品はウクライナの2025年を描いています。

後半、画面の隅に映っていたビルの1977年は何を表しているのか、気になりました。

最後の長い説明的な言葉いらなかったと思う。既に素晴らしい映像で言わんとしていることがわかったから。
もっと短く、できれば表象的にまとめてほしかった。

一日経っても印象的な映像がいくつも脳裏に張り付いています。
万人向けとは思わないけれど、こういう映像表現もあるのかなと、一見の価値はあると思いました。

アトランティスとは幻の豊かな土地が滅びいくことを表しています。なんて絶望的なタイトルなんだ。希望は絶望の淵に行けば、見いだせるのだろうか。一人ではなく、愛を育めば、いつか…?

戦争の悲惨さ痛ましさを描いた作品は数多くありますが、悲惨の先の、戦いが終わった後の絶望を描いた作品は私は初めてです。勝っても負けても(この作品では戦勝国ですが)どれだけ犠牲を払い、痛ましいのかが伝わってきました。
勝てば祖国を守った歓喜に酔いしれる(←たいていの戦いを描いた映画はこれ)わけではない。それは一瞬。その後は、長い長い復興の戦後の苦労が続き、全てを失った人々にパワーは残されていない。何のための戦いだったのか。これだけの犠牲を払い、何を得たのか。
戦うシーンを描かずに戦争の虚無を描いた作品。
こういう作品は大切だなと思いました。
メッセージをしっかり受け止めました。
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