すずきじみい

ジャスト 6.5 闘いの証のすずきじみいのネタバレレビュー・内容・結末

ジャスト 6.5 闘いの証(2019年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

監督、脚本: サイード・ルスタイ

『別離』『ある過去の行方』『セールスマン』『ウォーデン消えた死刑囚』『悪は存在せず』『人生タクシー』

監督は違うけれど、本作を含めて7本の映画を観てきて、思うのは、
イラン映画って、適度に暗くて静かで、でも、ドラマがしっかりしてて、とても観やすい!
演出も変に凝ったり、作家性を追求しすぎなくて感情移入しやすい。
感動のさせ方も優れてる。日本よりよっぽど上手い。

本作も、麻薬密売で儲けて貧民窟からペントハウスの住人にのし上がった男が死刑になる前に[こんな自分に誰がした🖕]
とばかりに、世の不条理への憤りを語るシーンに、同情を誘う様な演出は一切なく、それが逆に深く刺さってくる。


反体制的なメッセージを込めた作品を作ると投獄されてしまうイラン。
ベルリン映画祭で金熊賞を獲った『悪は存在せず』のモハマド・ラスロフ監督は今、投獄されてるし、『人生タクシー』のジャハル・パナヒ監督は投獄、映画製作禁止の罰を受けながら『人生タクシー』を完成させた。

宗教的政治的に束縛された中でこんなに優れた作品作りを続けられるイランの映画人達って凄い!と思った。

度重なる経済制裁による貧しさで、人々が苦しく諦めの中で生きているというイラン。
本作にも貧民街で生きる人々やホームレスが大勢出てくる。
底辺で生きてる人々は良心も法遵守の精神もなく、犯罪への抵抗感もない。

イランも含め、政情不安な国、国際社会と喧嘩してる国の人々は希望も自由もない一生を、黙って耐えている。

希望も自由も持てる国に住んでて、自分は不運だ、とか生きがいがない、とか感じる自分はなんて幼いんだろう、と思う。