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ジャスト 6.5 闘いの証のクリームのレビュー・感想・評価

ジャスト 6.5 闘いの証(2019年製作の映画)
3.8
イランの麻薬汚染と劣悪な刑務所環境が描かれていて、フィクションだけど見応えがありました。イランの映画は、政府批判や女性に対して厳しい検閲があるのにこの作品が世に出たのは、ある意味凄いかも知れないです。現在のイランの状況が覗けて勉強になりました。面白かったです。
近年、麻薬汚染が社会問題となっているイラン。薬物依存者やホームレスが溢れる街の薬物汚染の改善策として、警察は薬物撲滅特別チームを結成し、サマドをリーダーにガサ入れを行う。狙いは薬物売人の大物ナセルの逮捕。あらゆる手を使ってナセルの高級ペントハウスに乗り込むも大量の睡眠薬で自殺を図っていた。しかし、ナセルは死にきれず、劣悪な刑務所へと送られるのだった。




ネタバレ↓




冒頭、薬物所持者を追い詰められ、後一歩の所で逃げていた男がまさかの生き埋めになる。そして、荒れ果てた街の大きな土管の中でホームレスや中毒者達が薬物摂取していたり、死亡していたり、喧嘩していたりのカオス状態。そこを一斉に逮捕する警察。そんなに大量な人々を何処に収容するんだ?って、思ったら、劣悪な環境の刑務所にすし詰め。す、凄い。もうこの冒頭だけで目が離せなくなった。
イランの警察のやり方が、乱暴で驚いたがあの状況を見てたら、それも仕方ないのかも知れない。とにかく捕まる方も嘘ばかりで隙あらばズルをする。罪なんて認めません。驚いたのは、自分の9歳の息子に罪を擦り付けるクズな父親。この男、障害者なのだが、逮捕される事を泣いて恐れる息子に罪を被せてしまった。もう正しい人なんて皆無、すぐ裏切る。そして、辿り着いた麻薬王ナセル。
だけど、話を聞くとナセルも貧困層の出で、自分の家族や親族の為に犯罪を犯していた。勿論、許される事では無いけど、彼だけが悪かったとも言い切れない。沢山の人が薬物の犠牲になっている以上、最後の死刑は気の毒だけど仕方ない。
そして、ナサルの死刑の後。サマドが 『自分が警察に入った頃、麻薬中毒者は100万人だった。だから長年逮捕し続けたのに今じゃ650万人だ』と言って終わります。やってられないって事ですよね。イランの問題を提起する作品だったのかと思います。
パワーを感じる作品でした。そして、ナセル役の俳優さんが、エデン・アザールに似てて、どうしても憎めなかった。
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