せっ

悪なき殺人のせっのネタバレレビュー・内容・結末

悪なき殺人(2019年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

無いものを愛させる。

フランスの雪山の中の田舎で女性が行方不明となる事件が発生。その事件の真相が様々な登場人物の視点で明かされていく話。

事件を比較的中立に見る最初のアリスの視点ではダークなサスペンスのトーン。『ファーゴ』とか『ウインドリバー』のような社会派サスペンスなのかと思ったらコメディでした。

でもアリスの不倫相手ジョゼフの視点になると死体を愛する変質者映画になるし、被害者と関係を持つ少女の視点になると年の差がある女性同士の上手くいかない恋愛映画になるし、アリスの旦那マリオンの視点では急にコメディ(笑)(これは完全に今年見た『SNS 少女たちの7日間』の犯罪バージョンではと思ったね)

全く考えてることも行動も違う登場人物達には共通点もあって、皆どんな形であれ、誰かを愛しているということ。そして皆"無いものを愛している"。

アリスの場合は、全く見当違いな推理をしているように、旦那と不倫相手が自分のために争っているという状況に酔っていてその自分を1番愛してそう。ジョゼフは死体の人物を全く知らないのに勝手に空想で恋してるし、被害者を若さゆえに愛しすぎる少女もまた相手の気持ちより自分の愛する気持ちが全て。

"無いものを愛した"最大級がマリオンなのだが、これ写真が美人じゃなくておっぱいも見せてなくてもここまでするのだろうか。この映画から学んだのは本当の自分を愛してもらうより、幻想の自分を愛させるのが勝ちなんだなと。

真相が徐々に解き明かされていくのも爽快で、ここからは個人的などうでも良い話なのだが、最近「真犯人フラグ」で伏線ばっか散りばめられてフラストレーション溜まってたし、あな番も全然伏線回収って感じの映画じゃなかったので、ここでその溜まったものが解消された(笑)
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