このレビューはネタバレを含みます
衝撃的な静けさ。
喜怒哀楽、スリル、恐怖、悩み、迷い、、、日常生活で得られない感情をフィクションで増幅した状態で疑似体験し、大抵は救われていく主人公たちから、カタルシスを得るのが映画だと思っていた。
が、この映画では、感情の増幅はない。ただ日常的な退屈さ、美しさ、楽しさ、優しさ、悲しさ、迷い、悩み、ときめき、、がちりばめている。
昔、スペイン人の知人が、ハリウッドは何も語っていない(ヨーロッパの映画は、人生を語っている)と言っていたことを思い出した。
最後のシーン、テレビが故障する、これから二人が向き合わなければならない、というシーンで映画が終わる。これから、あのふたりの間で、どんな会話がなされていくのだろう?お互いを思いやりながら、この関係はどんなふうになっていくのだろう?という、まるで友人を心配するようなあたたかな余韻を残してくれた。
監督が小津安二郎を師と仰ぐらしいので、東京物語を見てみよう。