このレビューはネタバレを含みます
東京国際映画祭にて。
45年間1人の死者も出ないイラン山間の寂れた村を舞台に、孤独な老人コミニティーの「もう死にたい」が可笑しく滲む苦味のあるヒューマン・ドラマ。
老人たちの長的なアスランが村にやって来てから、誰も死ななくなった事を理由に、自分たちが死ぬために、まずアスランに自殺して貰いたい爺さんたちと自殺を防ぐ事が任務の駐留軍兵士とのオフビートな攻防戦が面白い。
加えて、素人を多数起用している為か、演者としての巧さより、顔に刻まれている皺が醸す味が全面に出ている。
物語が進むにつれ「死にたい」想いが、未婚のままの人生や、愛を謳歌してこなかった事への後悔に起因している事がわかる。
すると途端に達観しているように思えた爺さんたちがより人間味を増しチャーミングに写るから不思議だ。
「愛と死」人生の二大テーマとの向き合い方を晩年になってもユーモラスに模索する寓話。