おーもり

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームのおーもりのネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます

ありがとう。なんて優しさに満ち溢れた映画。
まさかと思ってた事を全て、丁寧にやってのけてくれた。
全ての人に、再スタートの機会があることを肯定してくれる作品。

MJとの恋路、ラストのキスシーンの美しさ儚さとても素晴らしかった。
ネッドのギャグも冴えまくってた。
木になった科学者が居ないか聞いて?とか、スパイダーマンの親友の末路とか、何かに付けてハンドシェイクのお決まりやるのも微笑ましい。

急襲する歴代ヴィラン達。
お知り合い同士が自分たちの行く先を問答し、この話がどう転んでいくのか見えてくる。
予告からの想像では、ピーターは一体誰を助けようとしているのか。何のためにストレンジと対立するのかが疑問だった。スパイダーマンと闘い命を落とす運命にある彼らを、闘いわず生きたまま元の世界に返そうとしているのかと勘ぐっていた。
でも違った。更に優しい道を選んだ。
過去3作+2作の結末を否定し、より良い結末を模索する。
その自信の裏付けは過去作のピーターは得られなかったもの。それはアベンジャーズとの経験。スタークの技術と、受け継いだ意思。なにより、彼の周りに寄り添ってくれる家族、親友、恋人がいるからこそだ。

そして、誰もが夢見た展開。MJの様に、期待しなければ絶望しないという面持ちで待っていたスパイダー同窓会。
ピーターに会いたいという皆の想いが、色んな壁を超えてポータルで繋がった歴史的な瞬間だ。
スパイダーバースの感想にも書いたが、過去リブートを繰り返し不遇と見られがちだったスパイダーマン作品達が、スパイダーマンであることで救済されたんだ。
しかも、集合しただけにとどまらず、先人のピーター達が抱えている心残りをも昇華させてくれた。
時に真摯に、時に楽しい掛け合いで。スパイダーマン同士だからこそ分かち合える孤独や、同じ運命を辿った悲しさを共有し癒やしあう。
闘いの中でさえ、パーソナルなトラウマを乗り越える描写を、セリフ抜きで魅せてくれる。
なんて優しい作品なんだろう。
劇中内の役としてだけではなく、同じキャラを演じた役者同士の想いが重なり表情に滲み出ている気がした。
これもトビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールドのお二方の積み上げてきた技量の為せる技。ありがとうございます。

ラストも何とも言えぬ余韻を残す。
ストレンジ先生が言っていたとおり、根本の問題はピーター・パーカーとスパイダーマンの2つの人生を選べていないという部分に対しての結論。
一度は再スタートしようとしたものの、MJの額にある傷を見てセリフもなしに去っていく姿が切ない。
先人のスパイディが口を揃えて言っていたとおり、ヒーローは謎に包まれた存在であるんだ。というその状況に。彼らもヒーロー活動を行うことで、周囲に危険を晒してしまった経験者。
素顔を隠すマスクヒーローの理由であり宿命だ。
スパイダーマンは孤独と向き合い、それを跳ね除けるように軽口を叩いてヴィランと戦うNYの市民。
今作でまさにスパイダーマンに成ってしまった。
この先のトムホスパイディの幸せを願ってやまない。

あと、スパイダー同窓会が衝撃的すぎて忘れかけるけど、序盤の逮捕騒動
弁護士くるまで待って!弁護士はどこ?弁護士が必要だ!
杖ッターーーーーーーーーン!!
ここに良い弁護士がいるぞ!NYを守る別のヴィジランテ。全く予想外で、これもありがとうございました。