SANKOU

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームのSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

4.4

このレビューはネタバレを含みます

マーベルシリーズの『スパイダーマン』は、ティーンエイジャーの青春コメディーとして楽しめる部分も多かった。
正体を隠しながらMJという同級生に恋をし、時にスパイダーマンとして人助けをしながら青春をエンジョイするピーター・パーカー。
『エンドゲーム』の後、彼はアベンジャーズとしての活動を断り、身近な人々を助けるために生きることを決めた。
が、彼の物語は『ファー・フロム・ホーム』で「故郷から離れて」、そして今作の『ノー・ウェイ・ホーム』で、ついに「故郷に帰る道はない」に至ってしまう。

まずは様々な葛藤がありながらも、前作でピーターが自分をスパイダーマンであるとカミングアウトしたことがとても大きい(ミステリオによって強制的にカミングアウトさせられたわけではあるが)
そのおかげでMJとの仲を進展させられた部分はあるものの、正体を知られてしまったことで彼の周りには悪影響が出てしまう。
世界はピーターを信ずる者と弾劾する者に分かれてしまった。
その煽りを受け、MJとネッドは大学を不当な理由で不合格にされてしまう。

追い詰められたピーターは、魔術師であるドクター・ストレンジことスティーヴンに助けを求める。
世界の人々からピーターがスパイダーマンであるという記憶を消してほしいと。
しかし、スティーヴンが呪文を詠唱する途中で、ピーターは自分の身近な人には正体を覚えておいてもらいたいと何度も邪魔をしてしまう。
彼は自身と身近な者を助けるために行動を起こした。
が、結果的にその行動が彼と身近な人の運命を揺るがしてしまうことになる。

今までのマーベルシリーズの中でも特に驚きの多い作品だったが、よくここまでの胸熱な展開を用意したものだと感心させられた。
呪文が失敗したことで、マルチバースの世界からピーター・パーカーの存在に引き寄せられた者たちが集結する。
『アメイジング・スパイダーマン』は未見だったが、サム・ライミ版の『スパイダーマン』シリーズは全て観ていたために、グリーン・ゴブリンやドクター・オクトパスの登場には心が躍った。
しかもピーターは彼らを退治するのではなく、助けるために行動する。
彼らはそれぞれに心の中に悪の存在が住み着いてしまったことで、最終的には悲しい運命を辿ることになっていた。
そんな彼らがこの作品の中で救われるかもしれないのだ。
これはとても衝撃的な内容だ。

ピーターは彼らに治療を施し、まずはオクトパスの狂気を取り払い、本来のオクタビアスに戻すことに成功する。
が、邪悪なゴブリンの人格に支配されたノーマンは、突如ピーターに攻撃を加える。
ゴブリンに同調したエレクトロやサンドマンらも逃走。
そしてゴブリンの攻撃により、ピーターにとって最愛の存在であるメイは命を落としてしまう。
自分が正しいと思った行動で、愛する者の命が奪われてしまう。
絶望したピーターは姿をくらます。

が、主人公の絶望が大きいほど、その後の展開は熱くなる。
呪文の失敗によりこの世界に引き寄せられたのはヴィランだけではなかった。
まさかトビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールドまでもが、この作品に登場するとは思わなかった。

大いなる力には、大いなる責任が伴う。

三人のピーター・パーカー、三人のスパイダーマンは、ヴィランたちを治療して元の世界に戻すために結束する。

最後まで胸の熱くなる映画だったが、ピーター・パーカーの下した決断はとても切なかった。
これは本当に彼が望んだ結末だったのか。
が、おそらく彼が大切な者たちを守るためには、これ以外の決断はなかったのだろう。

自身がスパイダーマンであることを知られてしまったことで、ピーターの青春は消えてしまったといっても良い。
が、この映画のラストは彼の再出発の物語が始まることを表してもいる。
いつかまた彼がスクリーンに戻って来てくれることを願う。

そしてこの後の物語はドクター・ストレンジへと引き継がれる。
SANKOU

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