グラッデン

ファースト・カウのグラッデンのレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
4.3
アメリカのインディペンデントで活躍するケリー・ライカート監督の日本初上演作品。西部開拓時代の米国を舞台に一攫千金を狙う男たちの物語、なのだが【金の卵】は盗んだミルクで作ったドーナツというのが面白い。

当初、淡々と進む物語の展開に入り込むかたちを模索しながら鑑賞していたが、男たちの静かな野心を、静寂が支配する自然豊かな風景が包み込む流れに慣れてきてからは没入することができた。

彼らの日常を描くこと=生活音を拾ってダイレクトに伝える、という姿勢は最近見た『枯れ葉』(アキ・カウリスマキ監督)、『PERFECT DAYS』(ヴィム・ヴェンダース監督)に共通していると思うが、敢えて入れる劇伴の音楽が非常に耳にも残りやすい。こういうスタイルは個人的に好きだ。

また、作中で描かれる社会階級=経済力という側面は、西部開拓時代でありながら、アメリカを一番強く感じたところだろう。経済力の付与に人種が結びつくという部分も含めて。

本作鑑賞後、ケリー・ライカ―ト監督デビュー作品の『リバー・オブ・グラス』(1994年)を観たところ、こちらの作品でも経済力の話と、BGMを極力用いていなかったのでスタイルに近いものと感じた。これを機会に同監督の作品を掘り下げていきたいと思う。