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ジャンゴ 繋がれざる者のEyesworthのレビュー・感想・評価

ジャンゴ 繋がれざる者(2012年製作の映画)
4.9
【自由と闘争のジークフリート】

クエンティン・タランティーノ監督×ジェイミー・フォックス×クリストフ・ヴァルツ×レオナルド・ディカプリオ×サミュエル・L・ジャクソンが送る西部劇ムービー。

〈あらすじ〉
南北戦争勃発が迫るアメリカ南部。賞金稼ぎのドイツ人歯科医キング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)は、黒人奴隷ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)の鎖を解き放ち、お尋ね者の三兄弟を追跡する。やがてジャンゴの実力を認めたシュルツは、2人で賞金稼ぎの旅を続けることにする。そして2人は、奴隷市場でとある農園に売り飛ばされ、生き別れになったジャンゴの妻ブルームヒルダを取り戻しにカルビンの元へ…。

〈所感〉
タランティーノの西部劇とあればガンアクション全開で面白くないわけがない。白人と白人が殺し合う構図はよく見るし、カウンター的に黒人が白人に反逆する構図もよく見えるが、この映画では黒人(馬に乗る自由なジャンゴ)VS黒人(農園の奴隷である人々)の構図に特にフォーカスしているように感じた。主人と奴隷というわかりやすい上下関係に慣れている黒人奴隷の人達は、自由に外を歩き白人と対等に会話しているジャンゴに対して「一体なんなんだコイツ…?」と異物感を持って接している。これはアカデミー賞を受賞した近年の『グリーンブック』のドクター・シャーリーにも見られる画だが、ジャンゴは現状に甘んじている黒人達を鼓舞するように死にもの狂いで戦って、これでもかとバンバン人を殺しまくる姿がカッコイイ。相棒となるシュルツは賞金稼ぎとあってか、この時代には珍しく周りから白い目で見られようと、黒人に対して偏見無しに真正面から付き合おうとする肝の座り方が立派でダンディだ。そしてこの映画は悪役が素晴らしい。レオナルド・ディカプリオ演じるカルビン・キャンディは金の亡者で狡猾なキャラクターでこの時代のヒールとしては完璧な出来栄えだった。そしてそのツレのサミュエル・L・ジャクソン演じたスティーブンは煩わしい老人だが、カルビンには無いずる賢さと頭脳で一番ハマっていた。
4人の主要キャストの面目躍如たる演技ぶりに脱帽。タランティーノ節炸裂の素晴らしい西部劇を見れた。時代背景もあって差別表現がエグすぎるが、昨今のポリコレ全開の生温い映画に比してタガが外れていて最高である。黒人が黒人奴隷を演じることでしか見れないタフさ、危うさがある。次は『ヘイトフル・エイト』を見よう。
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