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SKIN/スキンのAKのレビュー・感想・評価

SKIN/スキン(2019年製作の映画)
4.4
白人至上主義のレイシストに育てられた主人公が、1人のシングルマザーとの出会いによって愛を知り、レイシスト集団を抜け新たな人生を築いていこうとする実話に基づく物語

ヘイトなレイシズムの非道さと人生の再生を描いた内容で、全身にタトゥーを施し幼い頃から差別や暴力と共に生きてきた主人公が、過去の自分と決別する為に16ヶ月間をかけ計25回にも及ぶタトゥー除去手術に臨む姿はなんとも言えず痛々しい。

でもその痛みは彼がこれまで犯してきた罪の痛みであり、全身に施された無数のタトゥーは主義や信念と共に彼の心に渦巻き続けた憎悪の数。

集団を抜け新たな人生を歩もうとする主人公を、レイシスト達は徹底的に許さない。

この映画では、本当の愛を知りレイシスト集団を抜けようとする主人公のブライオンとは対照的に、愛を知らないままレイシストに拾われ、彼等に洗脳されていく貧困層の少年キャビンの姿が描かれている。

このキャビンの存在こそが幼い頃のブライオンそのものであり、劇中でブライオンの過去は描かれずとも、キャビンを映し鏡にする事でブライオンがどのようにしてレイシストに染まっていったのががよく分かる。
逃げ場のない人間に、更に逃げ場を与えない。

現実社会でもレイシスト達はストリートで暮らす貧しい子供達をターゲットにして、彼等に食事や住居を与える事で、あたかも自分達こそが本当の家族であるかのように接しながら、子供達の思想をレイシストとして洗脳していくそうで、その非人道的なやり方に吐き気がする。

でもそんな彼等によって行われている非道な人種差別という現実を、世界に向けた問題提起として伝える為、長い時間をかけ映画として完成させたガイ・ナティーヴ監督の執念によるメッセージが詰まった作品でした。

やっぱり実話に基づく作品は、心に響くものがズシリと重い。

「人は、生まれ変われることができるのか」

その答えは、必ず変われる。
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