大一

きみの瞳(め)が問いかけているの大一のネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

まだ作品を見ていない人はこんなレビューを見る前にぜひ作品を見てほしい。
 この作品はよくある青春ラブストーリーや感動ものとは違った切り口の作品であり、一口に恋愛映画と区切ってしまうのももったいない。
 まずこの作品が持つ一つの魅力はテーマが社会的で、人がもつハンディキャップをテーマに扱っているという点が挙げられる。主人公のるいは、ある過去から社会と自分自身に対して「償い」というハンディを背負っており、対するヒロインのあかりは視覚障害を事故で負うというハンディを背負っている。両者共に抱えているハンディとそれがもたらすそれぞれの生活の制限や、自身の葛藤を写すシーンが多く、それこそが2人が惹かれ合うシーンへの流れをより強くしている。
 次に「目」がもつ力を描いている点が印象的であるが、本作の監督の過去作「フォルトゥナの瞳」でも物語のキーとなっていたのが主人公が持つ目の力であったが、今回の作品では主人公やヒロインの心情や距離感を目の演技で表している。主人公るいを演じた横浜流星は過去に影を宿す青年の目を序盤に見せたかと思えば、アクションシーン周りでは猟奇的な爛々と輝く鋭い目を見せる。ヒロインあかりを演じた吉高由里子は視覚障害のあかりを目の焦点や目線のずらしでリアルに現実味を帯びたキャラクターを表している。唯一見せて欲しかったのはるいが光に満ちた部屋にあかりを招くシーンで、あかりの視点から見た光の輝きを映像で感じることができなかったのが惜しい点であった。
 また、作品の中で涙腺がやられたシーンとしてシーグラスのくだりと、2人が見つめ合うくだりが挙げられる。シーグラスのくだりはあかりが自分に言い聞かせた「傷ついた人は優しくなれる」というセリフも良かったがさらに終盤にそれをつなげるのがにくかった。2人があかりの部屋で見つめ合うシーンは、目が見えないあかりの目を、まっすぐに見つめることができないるいの葛藤に感情移入してしまい、切なさがこみあげる。さらに、見つめていないのがあかりにはわかっているという、ベタだからこそいいシーンだった。
 この作品の中では確かに偶然には出来すぎている展開が多く待ち受ける。そこには現実的な辻褄を考えれば疑問点が浮かぶが、あえてそこはフィクションなのだからと開き直りたい。先にあげたようにこの作品では現実でも重たいテーマが2人の人物に降りかかり、これでもかというほど社会の隅へ隅へと追いやられる。だからこそ、物語の救いとして「偶然性」が必要だと感じた。
大一

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